第33話

見下ろして僕に話しかける。

「やあ、そうちゃん。久し振り」

右手で軽く手を振った。

僕も笑い返し、答える。

「ほんと久し振りだよね~、あーちゃん! 元気だった?」

実は目の前の人物は僕の知り合いなんだよね~。

そう、知り合いってことは、僕と同じ数少ない『妖魔』って存在。

人間にはない、力があって。

昔は僕と一緒で人間を喰らってた。

ま、僕は今だに死肉なら喰らってるけどね。

あーちゃんはゆっくりと降りてきた。

「忘れちゃうくらい、かなり久し振りだよね~。50年振りくらい?」

そうちゃんは手に持っているものを大事そうに抱え直した。

「あはは~。そんなになるんだっけ? 忘れちゃったよ」

僕がそう返すと、あーちゃんはいきなり真面目な顔になった。

「蒼貴。久し振りでなんだんだけど、頼みがあるんだ。もう、こんなこと頼めるの、お前しかいなくなっちゃったんだ」

「……分かった。まあ、話は僕んちでしよう? 僕一人暮らしだから、安心して話せるよ。家庭用ロボットがいるくらいだし。ここだと、その手の中の赤ちゃんが風邪ひいちゃうよね? 藍(あお)」

きちんとした名前で呼ばれるときは重要な話をしている時だ。

そして、藍の手の中にいたのは可愛い顔で眠る人間の赤ちゃんだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る