2話




〈1年前〉






 まだ高校生になりたてのある日のことだった








 家からは結構な距離があるのに、その日は運悪く自転車が故障していた





 自分の幸運値ラックをこれほどまでに憎んだことはない




 憎んでも何も生まれないので、仕方なく傘をさして歩いていた





 公園の前を通り過ぎると中央に人影が見えた







 それこそが羽根宮さんだった






 段ボールの中に入れて捨ててあった猫を、自分が濡れることすら構わず傘を放り出し、慈愛に満ちた表情で、持っていたタオルで包んであげて助けたのだ。






 学校では入学してすぐに『ファンクラブができている』という噂があり顔だけは何となく知っていた






 この人はなんて心が美しいんだろうと感嘆の声を上げた。





 普段の学校では冷たい態度で話すが故に、人の心がない人だと決めつけている人にうんと見せてさしあげたいと思う。






 …何様なんだと突っ込まないでほしい…








 もっと羽根宮さんを知りたいと思った。






 その瞬間、俺は鼓動が高まり、気づいてしまった。




 ああ、そうかこれが恋に落ちた瞬間なんだ





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