新しい世界



目が覚めた。白人の女性の腕の中にいるのを感じた。え?この女、なんでこんなにしっかり俺を抱いてるんだ?俺はこんなに軽くないはず… いや、そうだ、俺は転生したんだった。ってことは、今は赤ん坊ってことか。


彼女は俺を別の女性に渡した。おそらく俺の新しい母親だろう。彼女は白人で、金髪だった。うーん… ヨーロッパ人かな?


いや、待て… 俺、白人に転生したのか?!


あのクソ天使、俺の肌の色を変えやがったのか?そう思ったけど、周りをよく見てみた。俺を抱いてる女が白人だったから、俺もそうだと思った。でも、そばにいた男を見て考えが変わった。


彼は30歳くらいで、ちょっと太っていて… 黒人だった。


もしこの人が俺の父親なら、俺は混血ってことか。


別に白人が嫌なわけじゃない。でも、自分の肌の色が大好きだったんだ。変わりたくなかった。


— 「グシャシャ、ジシャシャ…」母親が何か話した。

— 「スジャシャ、ジジジ、ウシュシュ…」父親が答えた。

— 「ハシャシャ、シシシシ、シャシャシャ…」助産婦らしき女性が言葉を添えた。


言葉が理解できない。英語なら少しわかるけど、これは違う。ドイツ語っぽい… でも、俺はドイツ語を話せないから、ただの推測だ。


すると、三人の表情が変わった。母親の目には涙が浮かび、父親は悲しげな顔をしていた。助産婦だけが冷静な表情をしている。


… ああ、分かった。俺が泣かなかったから、何か異常があると思ってるんだな。


ふざけんな、泣けって言われて泣くかよ。俺はもう大人なんだぞ。


母親がすすり泣き始めた。父親の眉がさらに深くなった。部屋の空気が重くなる。


… わかったよ、泣けばいいんだろ?


— 「おぎゃぁぁぁぁ!」


三人の表情が安堵に変わった。母親は嬉しそうに涙を流し、何か話しかけてきた。


すると、彼女は俺を胸に抱いた。


… まさか、授乳する気か?


……


おっぱい。


俺が立っていたら、間違いなく後ろに倒れてニヤけてたな。


そして、乳を口に含んだ。


…… うおぉぉぉ?!なんだこの甘さ?!こんなに軽いのか?!


これが母乳か… ビールよりうまい!!


… いや、さすがにそれは言い過ぎか。でも、マジで美味すぎる。



---


五ヶ月後


今では彼らの言葉を少し理解できるようになった。赤ん坊だから、脳が吸収しやすいのかもな。


兄弟が二人いることが分かった。サラとガビだ。


サラは可愛い女の子で、色白で赤毛だ。… え?うちの両親どっちも赤毛じゃないのに?もしかして、父さん浮気された?


ガビは母さんと同じ金髪。年齢は五歳くらい、サラは三歳くらいだ。


そして、俺につけられた名前は…


ラザロ。


ダッセェェェェェェ!!!


こいつら、名付けのセンス皆無か?!


まあいい、そんなことより…


母ちゃん、どこ?!俺、もっと天使のミルクが欲しい!


もし売れたら、俺は確実に金持ちになれるな。


— 「かわいい坊や、お腹がすいたの?」母さんが微笑む。

— 「この子、よく飲むなぁ。」父さんが呟く。

— 「時々、飲まずにただ胸を触ってるのよね… でも、いい子だから泣かないわ。」母さんが笑う。


— 「ママ!赤ちゃん見てもいい?」ガビが尋ねた。


どっか行け、ガキ。お前には俺のミルクはやらん。



---


さらに二ヶ月後


もう歩ける。


俺は兵士だったんだ。いつまでもハイハイしてる場合じゃねぇ。


それにしても、この家を探索するうちに気づいたことがある。


俺の家族、めっちゃ貧乏じゃね?


テレビなし、スマホなし、エアコンなし、電球すらない。


あるのはろうそく、暖炉、木製の古臭い家具。まあ、見た目は悪くないけど…


クソッ。俺は転生してもなお貧乏なのかよ!


神様、なんで俺を嫌うんだ?


せめてクリスティアーノ・ロナウドかビル・ゲイツの息子にしてくれよ!!


あと、もうひとつ気づいたことがある。俺の家は菓子屋だ。


うちは二階に住んでて、一階が店になっているらしい。


それが分かったのは、甘い香りが充満していたからだ。


だけど… 窓から外を見たときに、とんでもないことに気づいた。


この街、異様じゃね?


二階建ての建物が立ち並び、道は人で賑わっていた。周囲の人々のほとんどは黒人だった。


… まあ、それはいい。だが、問題はここからだ。


車が一台もない。


あるのは馬車だけ。


さらに、猫耳をつけたコスプレみたいな奴らが、本物の猫耳の生えた人間を捕まえていた。


… なんだこの世界は?!


… 俺、過去に転生したのか?!


絶望した。


このクソ天使があああああ!!!


貧乏転生でもう嫌なのに、時代まで中世?!ふざけんな!!


ここ、何年だよ?!1000年くらいか?!


そんなある日、俺の家に妙な客がやってきた。


一人は鎧を着た大柄な男。もう一人は猫耳と尻尾を持つ女だった。


「借金の回収に来た。」


父が怯え、母は俺を強く抱きしめた。


「金がないなら… お前ら、どうなるか分かってるよな?」


そう言って、男は父を殴り倒した。


俺はまだ赤ん坊だけど、決めた。


この世界で生き残るために、俺は… 強くならなければならない。


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元兵士の死から運命への転生 クレイジー @Divaldomiguel0724

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