第章 – 「ライバ四ル?いや、ただの排除すべき脅威だ!」

🖤 場所: 街の中心にある高級カフェ

🖤 時間: 翌日の夕方



---


【思わぬ遭遇】


カフェの雰囲気は比較的落ち着いていた。

昨日の屈辱的なショッピング事件から立ち直ろうとしているセリーヌとは対照的に、イリスは何事もなかったかのようにコーヒーを楽しんでいた。


「……まだ怒ってるわよ。」

スプーンをカップの中でくるくると回しながら、セリーヌが不機嫌そうに呟く。


イリスはニヤリと笑い、茶化すような声で言った。

「どうして?あのドレスを着た君は、めちゃくちゃ可愛かったのに?」


セリーヌの顔が一瞬で真っ赤になり、慌ててテーブルを叩いた。

「違うわよ!!あなたのせいで、まるで必死な女みたいに見えたじゃない!!」


「……ふーん、まぁ、実際そうじゃない?」


「はぁぁぁ?!?」


セリーヌが怒りでテーブルに身を乗り出したその瞬間——


「セリーヌ……俺の愛しの人!」


「……は?」


背後から聞こえたその声に、セリーヌは目を見開いて凍りついた。

ゆっくりと振り返ると、そこには——


長身、艶のある黒髪、狂気を孕んだ青い瞳……


イーサン・ブラック。


「……ちょっと、なんでここに?」


セリーヌの手が無意識に震える中、イーサンは自信満々の笑みを浮かべ、ゆっくりと近づいてきた。

そして、突然——


「さぁ、俺の腕の中へ!」


「!?!?!?!?」


セリーヌが何かを言う暇もなく、彼の腕の中に強制収納されてしまった!!


「イ、イーサン!!離して!!!」


「嫌だ。」


「嫌だじゃない!!!」


必死に抵抗するセリーヌだったが、イーサンの腕はがっちりとホールドされており、ビクともしない。


そんな二人のカオスなやり取りを、イリスは静かに見つめていた。

彼女はゆっくりとカップを置くと、目を細め、冷たい声で問いかけた。


「……ねぇ、これは何?」


イーサンはニヤリと笑いながら、まるで勝ち誇ったように答えた。

「俺? 俺はセリーヌの未来の婚約者だけど?」


イリス:「……」

セリーヌ:「……は?」


「ちょっと待って、誰が婚約者よ?!ありえない!!」


イーサンは余裕たっぷりの笑みを浮かべると、スマホを取り出し、ひらひらと見せつける。

「ふっ、お前の母上はそうは思ってないみたいだが?」


「……は?」


ポチッ——(通話ボタンを押す音)


スマホのスピーカーから、すぐに母親の声が響いた。


📞「イーサン!元気にしてる?セリーヌに会えた?」


「もちろんです、お義母さん!」

イーサンは満面の笑みを浮かべながら続ける。


「ですが……どうやら邪魔なちっこいネズミが近くにいるみたいで……」


📞「えっ?どういうこと?」


その瞬間、バンッ!!


イリスが一瞬でイーサンの手からスマホを奪い、通話を強制終了。


「……あら、通信障害かしら?」


「……お前……?」


イーサンの目が驚きに見開かれるが、その直後——


「ぎゃっ!!?!」


彼の手首が冷たい鉄のような力で掴まれた。

目の前には——


ニッコリと笑うイリス。


「イーサン・ブラック、で合ってる?」


「……そ、そうだけど?」


「へぇ……なるほどね。」


イリスはそのままイーサンに顔を近づけ、ゆっくりと囁いた。


「今すぐセリーヌから手を引かないと、五体満足でいられなくなるわよ?」


「……なっ?!」


イーサンの顔から血の気が引く。


「冗談……だろ?」


イリスはニコリと笑うと、手首をグイッと締める。


ギギギ……(骨がきしむ音)


「痛っ!?!?」


彼の悲鳴を聞きながら、イリスは優雅にコーヒーを一口飲み、穏やかな声で言った。


「ねぇ、イーサン?」


「な、なんだよ……?」


「あなたの顔、もう二度と見たくないの。」


イーサン:「……。」


セリーヌ:「……。」


イリス:「……ねぇ、今から消えてくれる?」


その場の空気が一気に張り詰める。


イーサンは顔を引きつらせ、悔しそうに唇を噛んだが、最終的に——


「……クソッ!!」


全速力でカフェから逃げ去った。


セリーヌ:「……。」

イリス:「……。」


「……あの人、意外と走るの速いのね。」


「感心してる場合じゃないわよ!!!」



---


【その夜】


ベッドに倒れ込んだセリーヌは、人生最大級のため息をついた。


「なんで……なんで私の周りにはイカれた人間しかいないの……?」


📩 新着メッセージ 📩


📩 イリス:「決めた? 私といる?それともあのバカ?」


📩 セリーヌ:「どっちも選ばないわ!!私の平穏を返して!!」


📩 イリス:「選択ミスね。もっと面白いことが起こるわよ〜♡」


「もうやめてぇぇぇ!!!???」


頭を抱えながらも、どこかワクワクしている自分がいることに気付いたセリーヌ。


「……あれ?」


彼女は、今起こったすべてが、なぜか少しだけ……


楽しかった。


そして、それが一番の問題だった。



---


(続く)


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