「銃弾の下の花」

@nidla2ron

序章

🔹 オープニングシーン – 血塗られた始まり


🖤 場所: ヴァレンティーノ邸 – 会議室

🖤 時間: 深夜


[静寂の中に潜む危機]


ヴァレンティーノ邸の豪華な会議室には、張り詰めた緊張が漂っていた。

長いテーブルを囲むのは、見慣れた顔ぶれ――ヴァレンティーノ一家に忠誠を誓ったマフィアの男たち。

しかし、シャンデリアの光が揺らめくその影の中には、裏切りの気配が重く垂れ込めていた。


テーブルの最上座に座るのは、アイリス・ヴァレンティーノ。

脚を組み、指の間に燻るシガーを挟みながら、冷酷な灰色の瞳で部屋を見渡していた。


「――淑女の皆さん、紳士の皆さん…」

彼女の声は柔らかいが、その奥には氷の刃のような鋭さが潜んでいた。

「どうやらこの中に…私を裏切った者がいるようね。」


ざわめきが広がる。視線が交差する。

しかし、誰一人として口を開く者はいなかった。


[爆発の瞬間]


彼女が言葉を紡ぎ終える前に――


銃声が鳴り響いた。


シャンデリアのガラスが砕け散る。

光が消え、部屋は暗闇に包まれる。

驚愕の叫び声が響き渡る。


アイリスは感じた。


頬をかすめる熱。

次の瞬間、頬に赤い筋が走る。


…だが、彼女は恐怖するどころか、ゆっくりと顔を上げた。

皮肉げな笑みを浮かべながら、視線を自分に銃口を向ける男へと向ける。


左隣の席に座っていたその男は、未だ銃を握ったまま震えていた。


「なんて哀れなことかしら…」

彼女はそう呟くと、指で頬の血を拭い、ゆっくりと舌先で舐めた。


[生き残る時間は一分]


男――かつての忠実な側近の一人――は、恐怖に満ちた顔で立ち尽くしていた。

まさか彼女が微塵も動揺しないとは思っていなかったのだ。


「アイリス… 俺は――」


だが、彼に弁明の時間は与えられなかった。


アイリスは迷うことなく銃を抜き、

一発の銃弾を、彼の眉間に撃ち込んだ。


男の身体がテーブルの上に崩れ落ちる。

血がゆっくりと広がり、かつて彼が忠誠を誓った誓約書を濡らしていく。


「他に試してみたい者は?」


彼女は冷たい視線で、一人一人を見渡す。


沈黙。


答えは、それだけだった。


[新たな護衛の到着]


その時だった。


扉が勢いよく開かれた。


現れたのは、中年の男。

焦燥の色を隠しきれぬまま、彼は告げた。


「ボス… 新しいボディガードが到着しました。」


アイリスは深く息をつき、死体に最後の一瞥をくれた。

そして、ゆっくりと立ち上がると、黒いシャツの襟を整える。

シャツには、先ほどの血が小さく滲んでいた。


「ようやく…」


彼女は低く呟き、

扉の向こうへと歩き出した。


――果たして、その護衛は“生き残る”価値があるのか?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る