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科学というものの意義とは何なのか。何のために人間は科学技術を発展させるのか。それは生きる苦しみを少しでも少なくすると言うことだろう。産みの苦しみから女性を解放したというのが、あの創造装置の真の意義だろう。生きる者にとって、生きる世界はあらゆる苦しみに満ちている。その中で、少しでも幸福になるためには、その苦しみを少しずつでも殺していかねばならない。
産みの苦しみからの解放という夢を成し遂げた科学が、次に目指すものは何か。それは当然、死の恐怖からの解放だ。死にたくない。ずっと生きていたい。それは生命としての人間の、究極の欲望だろう。そしてリープ人は、それを不可能だとは思わなかった。
わたしは、不死の人間をつくると言う夢を持った科学者である父によってつくられた、超人なのだ。わたしの肉体は、不滅の因子を持っている。よって、死ぬことはない。少なくとも、リープの科学の上では、死ぬことが不可能だと言う因子を、体内に持っている。
不滅因子というものを見つけたのは、ある海底都市の科学者だった。クラゲに似たある不思議な動く植物が、決して死なないということを彼は発見したのだ。たとえ空気や水がなくなっても、その植物は自分の体内で、自分を生かす環境を作ってしまうのだ。そしてその植物は個体として死ぬことはなく、延々と生命活動を維持し続ける。どんな環境でも生きていくことができる不滅の植物。その名前も、希望、キオという。わたしの名は、そこから来ている。
もうお分かりだろう。わたしは、父の生殖細胞に、その植物の不滅因子と、それを補助するための修復因子を加えられて創造された、不死の超人なのだ。
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