マスター・クラヴィス〜こんな僕でもヒーローになれますか?〜

歪な多面体

第1話 UNLOCK

プロローグ

きっと、子供の頃はみんな憧れていた。


テレビの向こうで、困難に立ち向かいながらも挫けることなく、悪を成敗する。

そんなヒーローに。




きっと、俺達は夢中になっていた。


弱きを助け強きを挫く彼らに。

どんな逆境も、愛と勇気の力で乗り越える彼らに。




でも、俺達は子供だった。

子供だから、眩しい部分にしか目がいかなくて、歪な陰りに気が付いていなかった。



彼らは一様にして、高潔な精神を持っている。

彼らは一様にして、確固たる意志を持っている。

皆から愛される愛嬌を持っている。

頼りになる仲間がいる。



でも、ヒーローという存在の本質は、傍観者モブから理解されることはない。


ヒーローだからって、自己犠牲とか、悪に立ち向かったりすることがさも当然のように語られるから。



ヒーローだって一人の人間なんだ。

強大な敵に立ち向かうのは怖いんだ。


だけど、一度「ヒーロー」というレッテルを貼られてしまえば、彼らの勇気は義務になる。


そんなのは絶対に間違っている。



だから、せめて俺だけでも理解したかった。

傲慢かもしれないが、それでも。








「君には2つの選択肢がある」

「一つは、ここで起きたことを忘れて普段通りの日常に戻ること」

「もう一つは……ボクと契約をしてヒーローになり、修羅の道を進むこと」



裏路地でうずくまる俺に、どこか神々しい雰囲気を纏う少女は、厳かに手を差し伸べる。

その小さい手の上には、アンティーク調の装飾が施されたが横たわっていた。


「君がこの鍵を受け取れば、契約は成立だよ」


表の通りでは、まだ魔法少女と怪人が交戦中だ。

どうやら怪人が優勢のようで、魔法少女は苦しい表情をしている。



「……どうやら限界が近いみたいだね。君も、あの魔法少女も」


俺の視線を辿ったのか、少女は言葉を零した。


「でも契約をすれば、全ては解決する」

「さあ早く……君の答えを教えて?」


こてん、とわざとらしく首をかしげる少女。



―――対価はなんだ?

そんな疑問を抱くも、俺の中で答えは決まっていた。





俺の夢は、ヒーローを助ける存在になること。

彼らの隣に立って、理解者として支えること。


――――いや、それもあるけど、もっと深い所。










ずっとなりたかったんだ、ヒーローに。

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