虚像の恋人

第1話

「もしかして、左利き?」



突然隣から掛けられた声に、思わず肩を揺らした。


その距離は相手の髪が肩に触れるほど近い。


それもそのはず、ここはカラオケで目の前では友達がマイクを握りしめていて、それに合わせて数人の子達が大熱唱してるからだ。


こんな大音量じゃ、普通の距離で話したとしても聞こえやしない。


それは分かっているけど、あまりの近さに思わず身を引いた。



「あ、ごめんね?近すぎたよね」



そう言いながら申し訳なさそうに笑う彼とは、今日初めて会った。


いわゆる合コンってやつだ。


男4人女4人の総勢8人が集まるこの部屋は、熱気も相まって少し蒸し暑かった。

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