第2話 先輩の過去と人生の師
「
「将来的には気象予報士の仕事もAIに奪われるんじゃないか。面白く分かりやすい解説を心がけてきたけど、それだけでいいのか?もっと専門家としての役割があるんじゃないか。このままでいいのか、キャリアアップできるのだろうか……」
そんな迷いの中で、この論文に巡り合い、その著者に会うため越後まで足を運んだ。田上の悩みを聞いた彼は静かに答える。
「田上君にとって『気象予報士の役割』とは何だと思いますか?もし、それが『未来の天気を予想すること』であるなら、人間から機械へのパラダイムシフトは既に実現しています。ただし、それは『AI』じゃなく、スーパーコンピュータによる数値予報の話です。AIが今代替しようとしてるのは、その『スパコン』の役割なんですよ。つまり、機械から機械へのパラダイムシフトということです。それに、人間は何度も試行錯誤を繰り返しながら成長していくものです。実はAIも、その原理は同じなんですよ。」
さらに彼は続ける。「数値予報は物理学の法則で
田上はこの言葉に衝撃を受け、
田上の過去の苦悩は、深雪にとって意外だった。実は彼女が気象予報士を目指したきっかけは、田上の気象キャスター姿に憧れたからだ。学生時代の彼女にとって、テレビで気象解説をする田上の姿は、華やかな「アイドル」のような存在だった。もちろん、本人にはそんなことは言えない。深雪は、青春の1ページとして、そっと心に秘めていた。
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