『妊娠・出産回想日記』レビュー
── 経験を越えて、心に届く言葉がある──
レビュアー:ひまえび
私は男であり、妊娠・出産という経験に直接触れる立場にはありません。
また、子どももいないため、正直なところ共感できるかどうか最初は少し不安がありました。
それでも──
この『妊娠・出産回想日記』は、そんな私でも自然にページをめくり続けたくなる、不思議な力を持っていました。
エピソード一つひとつが過度に飾られることなく、
かといって過剰に感情を押し付けるわけでもなく、
ただ“そこにあった現実”として静かに語られていく。
その誠実さが、読み手の立場を越えて心に響いてきます。
特に最終話「帰宅」まで読み終えたとき、
一つの命が生まれるまでに積み重ねられた日々と、
それを見守る周囲の人々の想いの重みが、
静かな余韻となって胸に残りました。
自分とは違う経験であっても、
誰かの生きた時間をこうして辿ることができる──
それ自体が、とても尊いことだと改めて感じさせてくれる作品です。
すべてのエピソードを通して、
書き手の真摯なまなざしに、心からの敬意を表したいと思います。