学校で一番可愛い女の子に告白されたけど、絶対嘘告白だと思うので警戒してみる。あれ? もしかしてヤンデレですか?

リアルソロプレイヤー

本編

第1巻的内容 ヤンデレっぽいお嬢様と付き合ったり、ツンデレっぽいアイドルと友達になったり、ブラコンな義妹が帰ってきたり、男装ボディーガードにモデルガンで撃たれたり

プロローグ 学校で一番可愛い女の子からの告白

 高校へ入学して一週間が経ったある日。

 僕は下駄箱に入っていた手紙で呼び出されていた。

 いわゆる、ラブレターというものだ。


 でも僕は知っている。

 これが恋に縁のない、僕みたいな人間を騙すための手紙だと。

 もちろん、根拠はあるよ。

 実際に中学時代。一度だけその手で、呼び出されたことがあるからね。

 最終的には存分に笑われ。

 格好悪い姿を写真に収められて。

 次の日、クラスの皆に晒されたっけ。


 あの経験から今回も、僕は嘘だと疑っていない。

 なぜなら手紙の差出人。

 それが学年どころか、既に学校一の美少女としての立場を確立した――姫柊姫ひめらぎひめさんだったからだ。


 姫柊姫さんは背中まで伸びる長い黒髪が特徴的な女の子で、体型は小柄ながら、出るところはちゃんと出ている。また顔に関してはアイドルなんかよりもずっと可愛くて、既にウチの学校ではファンクラブまで発足しているほどだ。入学して一週間だというのに、本当色々と早すぎる話だ。


 そんな子が、僕如きに愛の告白?

 疑うまでもない。明らかに嘘告白だ。

 所詮、陽キャは陽キャということだろう。

 仲間内で僕を笑い者にして、楽しむつもりだ。

 でもそうはいかない。訓練された陰キャは、二度も同じ手に引っ掛からないからだ。


「ごめ~ん、遅れちゃった」


 放課後の校舎裏。

 告白としてはド定番。

 空には青い空が広々と広がり。

 活気に溢れる運動部の声が、ここまで届いていた。

 目の前に立つのは、長い黒髪に身長は150センチ前半ぐらいの女の子。

 それでも男を魅了するには十分過ぎる程、実った二つの大きな胸の膨らみ。

 そんな少女の黒い瞳が、僕――柊緋色ひいらぎひいろの姿を静かに捉えていた。


「……それで何の用かな?」

「それよりまずはお礼を。来てくれてありがとうございます」


 綺麗にお辞儀をして、僕の行動に礼を述べる姫柊さん。

 だけど別に、お礼を言われるほどのことじゃない。

 ただの陰キャの残念な習性だ。

 陰キャは基本、陽キャの命令を無視できない。

 面を貸せと言われれば貸すし、代わりに掃除当番を命令されれば、黙って言うことを聞く。見返りも求めず、称賛や賛美すらも求めない。それが最強の陰キャというもの。僕はそのルールに則り、この場に足を運んだに過ぎない。


「――柊君にお話があります」


 顔を上げて佇まいを正した姫柊さん。

 やはり学園で一番人気の美少女だ。

 人を騙す時すら、身なりに気を遣っている。

 心配しなくても、僕は逃げたりしないよ。

 陰キャな僕に、逃げるなんて選択肢ありませんから。


「…………」


 僕の顔を見たまま、モジモジと姫柊さんが胸の前で指弄りをする。

 しかも顔はやや赤く染まっていた。

 なるほど。なかなかの演技力だ。

 これなら大抵の人は、本当の告白だと思うだろう。

 照れ方としては、いい見本かもしれない。

 だけどあくまでも、フィクションにおける照れ方としてだ。

 現実でこんな風に照れる人はまずいない。


 恐らく台本でもあるんだろう。

 バカな陽キャが、ドラマや漫画を見て作った台本が。

 いくら告白された経験がないとはいえ、そんなもので陰キャが騙されるわけがない。

 現に僕はバリバリ姫柊さんのことを疑っている。

 そして疑いの眼差しを向ける僕を見て、遂に姫柊さんが口を開こうとした。

 一体、どんな告白が飛び出してくるのやら。


「――結婚を前提に。私とお付き合いしてください‼」


 その声は高校へ入学して一週間。

 最もよく校内に響いていた。

 しかもあまりにもド直球な告白に――


「……う、うん」


 僕も思わずOKを出していて。

 ……何をしてるのさ、僕のバカ。断らないとダメなのに。

 僕の返事を聞いた姫柊さんの顔が、パァ~と笑顔に変わっていく。

 なるほどね。ここから彼女の仲間が現れて、『嘘でした~』展開になるわけだ。


 高校へ入学したばかりとはいえ、ウチの学校には僕や姫柊さんと同じ中学出身の人も多いし、その人たちと徒党を組んで、僕への嫌がらせで絆を深めるつもりなんだ。なんて酷い行為なんだ。


 数による陰キャへの精神的暴力。流石はスクールカースト上位様がやる遊びだ。えげつなさはピカイチだよ。普通の陰キャなら、心にそれ相応の傷を負ったはずだ。だけど僕には一切効果が――


「ではこちらをどうぞ」


 姫柊さんが笑顔のまま、僕に何かを渡して来る。

 それは一枚の紙切れ。

 だけど普通の紙切れじゃなかった。

 その紙切れは僕の中から一瞬で、『余裕』の二文字を切り離した。

 なぜなら渡された紙切れ。

 それは――


「……姫柊さん。これって――」

「婚姻届けです」



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