情報公開

野々村鴉蚣

 

 私にはどうしても許せないことがある。それは、私の家族をバカにすることだ。にも関わらず、ココ最近は酷い。とあるインターネットの書き込み掲示板に、私の家族が事細かく晒され悪口を書かれていたのだ。

 しかもその内容は、取り上げるにはあまりに些細なことばかりである。

 この土日に親子でピクニックに行っている姿を目撃した。お弁当を作らされて奥さんが可愛そう。

 水曜日の三者面談で息子の将来を全肯定していた。息子が恥ずかしそう。など。

 明らかにストーカーの域に達していた。私は一体誰による書き込みなのか知りたくて仕方がなかった。不安で胸が痛い。

 かつてお付き合いしていた女性が私の家族に嫉妬でもしているのだろうか。それとも、私が出世することで退職を決意した元同僚による嫌がらせなのだろうか。

 私は不安に押しつぶされそうになりながら弁護士に相談し、情報開示請求を行うことにした。一体どこの誰が書き込みしたのか、そいつの住所を特定してやるのだ。

 結果が出るまで、私は常に家族と行動するよう心がけた。命を狙われているかもしれないからだ。

 鬼のように入れていた仕事のスケジュールだって減らした。家族を守るために。

 三ヶ月後、結果が弁護士から渡された。

 書き込みは私のパソコンから送られていた。

「そんな、どうして……」

 震える手で資料を何度も見返す私に、息子がポツリと言った。

「だってパパ、こうしたら僕たちのこと愛してくれるでしょう?」

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情報公開 野々村鴉蚣 @akou_nonomura

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