モブ少女はヒロインの友達を目指した
ののしのの
Ep:0 StArt
Episode:0-A —Prologue—
──人生を変える瞬間とはなんだろうか。
そう問いかけた時私なら『LoT』と出会った時と答えるだろう。
『Load of Tale』、見た目は普通のロールプレイングゲームなのだが、中身は──全くの別物。
登場するキャラは主人公の勇者を除いて全員女性であり、物語の目的も魔王討伐の合間に女性と遊ぶこと。
いわゆるクソゲーに分類されるものである。
そんな『LoT』にどハマりした私は──
「──勇者、すまん、君のことは忘れない!」
私は勇者をわざと溶岩へダイブさせる。
だんだんと減っていくHPのゲージ。
ゲージの色が赤色に入ったところで、ヒロインの一人が飛び込んでくる。
『勇者様! あなたを一人で逝かせません!』
『アルア……』
そんなセリフを残してエンドロールが流れる。
スタッフの名前の滝の最後に『Bad End No.9』の表示。
「終わったああああああ!」
喜びのあまり大声で叫んでしまう。
一周しただけで物足りなくなった私は周回が当たり前になり、ここ数日は全エンディング回収に向かっていた。
大体のエンディングはある程度簡単に辿り着けるが、数個ほどはシビアな条件でしか辿り着けないのだ。
そのせいか3日ほど徹夜してしまったが、死にはしない。
私の心はえも言われぬ喜びで埋まっていた。
その喜びを抱えたまま私は眠りについた。
慣れているとはいえ3徹は流石に体に障るらしい。
近くのソファーに寝転がり、そのまま私の意識は混濁に沈んだ──
『あんたほんとにバカですね』
「……は?」
気持ちよく寝ていた私を煽るような口調が邪魔する。
妙な浮遊感を覚えつつ目を開くと、そこは見覚えのない自室だった。
「どこ、ここ」
周りを見渡すも既視感は帰宅している。
『ここはあなたのご存じの世界ですが?』
「……ていうか、誰」
『私ですか? 教えて欲しいですよね?』
「……部屋から出よ」
心底鬱陶しい声の主のことを無視し私は部屋を出ようとする。
『ちょっと待って待って!? そんな端的に突き放さないでよー……』
「まず誰かも知らない人に止められて止まるわけないじゃないですか」
『確かに』
「それじゃあそういうことで」
『ちょっと待ったあああああああ!!!』
今度こそ部屋から出ようとして声の主は私を無理やり引き戻す。
『お願いだから自己紹介させて? ね?』
「だが断る」
『断らないで欲しいなぁっ!?』
不憫な様子の声の主に呆れつつも私は元いたベッドに腰を下ろした。
「それで、あなたは誰なんです? まず姿も見えないんですけど」
『私はこの世界の精霊の一柱のレイル。この世界に転生してきたあなたのサポート役なの』
「レイル……って、あれ、『LoT』のキャラにいた気が……」
まさかそんな偶然があってたまるか。
私の脳裏に浮かんだ予感を振り払う。
しかし、現実は非情で、そして奇跡を好むようだ。
『ご名答。私は──『LoT』のチュートリアルキャラ、サポートアンドロイドのレイルよ』
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