生存記録

墾田永年社会不適合法

1本目

コンコン...


「あ...あ~聞こえていますか?見えていますか?」


「あ...あなたが...へへ最初の一人です。」


「見てくれて...ありがとうございます」


「一人だと寂しいから、動画を投稿してみました。いつもいつも一人だから寂しくて、誰でもいいから私の生きていたことを知ってほしいと思って...」


「あなたがこれを見てどう思ってくれるのか私には分からないけど...嫌だったら!!すぐ閉じてくださいね...」


「えと...私がこれを始めた経緯を話します。」


「私は、中学生の時いじめに遭いました。突然、仲よくしていたグループの子達に無視され始めて...そこから、水をかけられたり、お弁当を窓から投げられたり...。思い出すだけでも苦しいぐらい、辛かったんです。」


「それでそこから...家に引きこもるようになって、人が嫌いになって、世界が怖くなりました。」


「優しい人がたくさんいることは分かっています。世界がきれいなのも分かっています。でも、怖くて...」


「そのまま、家から出れず、もう21歳になりました。」


「このままじゃダメだと分かっています。何年も前から...。でも、怖くて動けなくて...だから、決意表明の為にこの動画を上げます。見知らぬあなたが私を見守ってくれていると信じて。」


「私、これから頑張ります。明日は一歩でもいいから外へ、その次は近くの公園までとか...。」


「きょ、今日はこの辺で終わりにします。久しぶりにこんなに喋ったから、心臓がバクバクで...。」


「見てくれて、ありがとうございます。あなたの今日が、明日がいい日になるように、願っていますね。」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る