第11話
職場の先輩に聞くと、崇の勤める製本会社で依頼した仕事でミスがあり、謝罪に来ていたとの事だった。
その日から崇が私を避けるようになった。
会いたいと連絡しても、忙しいと会ってくれなかった。
その頃から、新人研修で仲良くなった同期の亜沙美に崇の事を相談するようになった。
「プライドが傷ついたってことじゃないかな」
「……………」
なんとなく分かっていた事だったけど、それでもその時はこんな事で別れるはずがないと思っていた。
どうしても会わなきゃ行けないと思い、ある日の仕事終わり、崇の家へと向かった。
家の前で崇が帰ってくるまで待っているつもりだった。
そして、一時間ほどマンションの入口で待っていると、足音が聞こえてきたので、顔を上げると崇が歩いてくるのが見えた。
なのに、私の足は崇がいる方へと動かなかった。
なぜなら、崇の隣には崇と手を繋いで歩く女性がいたからだ。
崇は私に気づかずその女性と話しながらこちらに歩いてきて、ようやく立ち尽くしたままの私に気づいた。
驚いたのは僅かで崇は少しため息をつくと、隣にいた女性に声をかけその場に待たせて、自分だけ私に近づいてきた。
「咲羅、ごめん」
「な、にが?」
「咲羅といると劣等感でいっぱいになるんだ。自分が情けなく思えて、会うのがツラくなった」
「なんで、崇は情けなくなんか、」
「アイツといると楽なんだ。別れてほしい」
そうして、私の初めての恋愛は終わった。
亜沙美に崇との終わりを話して、思いきり泣いた。
好きだった、ずっと一緒にいられると思っていた。
初めての恋愛が壊れて、もう二度と誰も好きにならないって亜沙美にしばらくは飲むたびに言っていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます