雨のまぼろし

沖島 芙未子

第1話

「ツキちゃん」

 昼休みの終わりがけ、学内書店から出てきたところで聞こえた声に、私は足を止めて振り返った。湿気のために顔の横で跳ねている細い髪が、振り返った拍子に白いブラウスの上で揺れる音がかすかに聞こえた。

 私のことをこう呼ぶ人は、この大学内には一人しかいない。振り返った先にいたのは、思ったとおり、高校時代からの友人の紘子ひろこだった。

「なんか、学内で会えるのは久しぶりな気がする。って言っても、一週間ぶりとか?」

「ね。先週、急に一限休講になったもんね」

 それから、私たちは邪魔にならないように通路の端のほうに寄って、授業の小テストやレジュメについてのプチ情報交換会を始めた。ツキちゃんはお昼これから? と紘子が聞くので、三限の空きコマの間にサークルの子たちと食べる予定だよ、と答えると、紘子は「そっか。あ、今日の日替わりランチ美味しかったよ。チキンのトマト煮。ズッキーニとか入ってるやつ」とおすすめしてくれた。私もつられて「おいしそう。じゃあ、今日は私もそれにしようかな」と笑う。

「……あ、やば、三限始まる。じゃあ、またね。近いうちにまた話そう。メールする」

 腕時計にちらりと目を遣って、紘子は慌ただしく地下食堂の出口の階段を上がって行ってしまった。「うん。また」と手を振っていると、ちょうど入れ替わりで、アーチェリーサークル所属の一年生二人、二年生と三年生が一人ずつの計四人が連れ立って食堂への階段を下りてくるのが見えた。


 六月中旬。ニュースで梅雨入りが報じられて、今日でちょうど一週間が経つ。今日も空は一日じゅう鼠色の雲に覆われていて、食堂の窓ガラスには雨の雫が絶えず滴っていた。テーブルに頬杖をついて外の景色に目を遣り、長く細い溜息をつく。そのとき、隣の席に座っていた一年生の女子が、対角線上の隅に座っている同学年の男子に話しかけた声で、私は食堂の中へと意識を引き戻された。

「渡瀬、なんか元気なくない?」

「あー。おれ、雨の日ってちょっと苦手で」

 一年生の渡瀬という学生は、軽く笑って頭を掻いた。彼に話しかけた女子がすぐに相槌を打つ。

「確かに、傘で常に片手塞がってるのも不便だし、どこへ行くにも濡れるし、憂鬱だよねえ」

「そういえば、一年生組はふたりとも下宿だったよね。洗濯物を外に干してきた日に限って途中で雨降ってくるとか、あるあるじゃない?」

「それ、めっちゃ分かります」

 話に入ってきた三年生も交えて、食卓は雨の日がいかにうんざりするものかという話題で盛り上がり始めた。いつもなら、私も共感して話に交ざりに行くところだ。けれど、今日はどうしてかそんな気分になれなかった。さっきの一年生ふたりの会話に、どこか引っかかるものを感じた。

 ――どうしてだろう。渡瀬くんのあの表情って、単に雨の日は不便だから嫌いとか、そういう感じではない気がする。

 私は鶏のトマト煮にフォークを立てて口へ運びながら、そのあとしばらくじっと彼の顔を見つめていた。

 どうして渡瀬くんの反応が気になったのかと言えば、私自身も雨の日が嫌いだからだ。サークルの友人にも、伊吹いぶきはいつも雨の日になるとテンションが低くなる、とよく言われる。

 私の耳には、雨が降るたびに“声”が聞こえる。その声はいつでも私を容易に暗い暗い闇のなかへと連れ戻してしまう。私はお喋りに興じているサークル仲間には分からないように眉間に皺を寄せ、さりげなく片手で耳を覆った。

 昼食後のお喋りのあとは、四限と五限の講義を経て帰路についた。下宿先に帰ったら、作り置きの惣菜で簡単な夕食にして、課題のレポートを進めて、選択第二外国語の小テスト対策をして、明日のバイトのために早めに寝て……。相変わらず止む気配の無い雨のなか、明日までのスムーズな行動をシミュレーションし始める。地味な紺色の傘に雨粒が当たっては弾けて、時折小さな飛沫が飛んだ。

 大きめの交差点の信号が変わるのを待っている途中、何の気無しにふと顔を上げてみる。そのとき、妙なものを見つけた。私の視線は一瞬にして、自分の斜め前に立っている人物に釘付けになる。

 ――あの子……。

 セーラー服を着た、中学生くらいに見える女の子だった。何が妙なのかというと、今日は傘をたたく雨粒の音が煩いほどの結構な本降りなのに、その子は傘を差していないどころか、頭に手を翳して降ってくる雨を避けるような仕草すらしていない。更に、足元に目を落としてみると、この天気にもかかわらず、彼女は長靴はおろか、普通の靴すら履いていなかった。女の子は靴下のままふらふらと歩道を進み、赤信号を無視してあっさりと車道のほうに出て行った。

 周りからの制止の声は掛からない。明らかに危険な行動をしているその女の子のことを、私以外の周りの通行人は誰一人として目で追っていなかった。彼女の存在に気付いてすらいないのだろう。

 私も、危ない、轢かれるよ、と話しかけたり彼女の後を追いかけたりする気にはなれなかった。なぜなら、私には分かったからだ。

 ――あれは、生きている人間じゃない。『この世に残ってしまった何か』だ。

 そう直感した瞬間、まるでその考えが彼女にも伝わってしまったかのように、少女がふと後ろを振り返った。知らんふりをする間もなく目が合ってしまう。可愛らしい顔立ちをした少女は、意外に幽霊らしくない血色の良い頬をしており、私を見て驚き顔で丸い目を瞬いていた。

 私は彼女と長くは見つめ合わず、密かに息を止めて、なるべく自然に見えるように、そっと彼女から目を逸らした。それでもやはり気になって、青信号に変わった横断歩道を渡る前に、もう一度斜め前へと目線を移してみる。すると、そこにセーラー服の女の子など最初から居なかったかのように、彼女の姿は跡形も無く消えていた。

「…………」

 横断歩道を渡りながら、俯いて考え続ける。三分ほど脳内会議を続けた結果、私は先ほどの出来事を一旦忘れることにした。気分を切り替えるためにひとつ小さく息をつく。

 下宿先の手前のスーパーマーケットで必要最低限の日用品を調達し、アパートの階段を三階まで上る。部屋の扉の前で壁に傘を立てかけ、鞄から鍵を出している途中で、不意に視線を感じた。思わず勢いをつけて振り返る。すると、今まさに階段の一番上の段に足を掛けようとしている人影が見えた。

 ――まただ。

 その人影とは十歩か十五歩ぶんくらいの距離があったので、宵闇も相俟って顔ははっきりとは分からなかったけれど、それでも、私はその影の主がさっきと同じ人物だと直感した。よく目を凝らしてみると、やはりその人影は中学生くらいの身長で、セーラー服を身に着けた女の子で、そして、当然のように靴を履いていなかった。奇妙なことは、彼女はさっきも傘を差さずにそのまま雨に濡れていて、濁った水たまりだらけの道路を靴下のまま歩いていたにも関わらず、髪も服もひとつも濡れていないし、白い三つ折りの靴下にも泥らしき汚れが少しも付いていないことだった。

 セーラー服の少女は、どうやら様子を見ながらおずおずと私のほうに近付いてこようとしているようだった。それが分かった瞬間、背中に怖気が走る。気付けば、ほとんど叫ぶような声で彼女に向かって言い捨てていた。

「――やめて。来ないでよ。私に近付いてこないで」

 すると、少女は意外なことに、驚いたようにびくっと肩を震わせて、気まずそうに斜め下へ目を伏せ、それ以上近付いてこようとはしなかった。よく見ると硝子玉のような真ん丸い目が、捨てられた人懐こい子犬のように揺れている。それでも、私は態度を変えるつもりはなかった。急いで鍵を探して部屋の扉を開け、逃げるようにワンルームの室内へ飛び込んで、かすかに震える手でチェーンロックを掛けた。

『……いぶきちゃんてさー、嘘つきだよね。ユウレイが見えるとか、テキトーなことばっかり言ってさ。ただみんなに注目されたいだけなんじゃないの?』

『なあに、伊吹。そこに何か居るだなんて、やめてよ。大っ嫌いな私のお父さんの、気持ちの悪い霊感とやらが遺伝したんじゃないでしょうね? もしそうなら、ママ、こんな気味の悪い家からは出て行くからね』

 それらの“声”は好き勝手に増幅したり、不快に歪んだり重なったりしながら私の頭の中に木霊する。耐えがたい不協和音が耳元で鳴り響く。これが雨の日にしばしば私を苛む“声”の正体だった。耳を塞ごうが何をしようが、自分の内から聞こえてくるその声を遮断することなんて出来やしないと分かっているのに、それでも私は震える両手できつく耳を塞いで、しばらく肩で浅い息をしながらその場に蹲っていた。

 結局、夕食の箸は進まなかったし、課題のレポートもほとんど手につかなかった。私は気の抜けたような溜息をつく。せめて小テスト対策のおさらいだけは済ませて、今日は早々に寝てしまうことにしよう。

 いつの間にか、窓越しに聞こえてくる雨音はだいぶ落ち着いていた。小雨程度になったのだろうか。私は湯船に湯を張る前に一度外の様子を見ようと窓を開けてみた。

 予想どおり、外は弱い雨がぱらつく程度になっていた。ただ、テレビによると、雨雲はこのまま夜中までこの地方にかかり続け、明け方に少しの時間だけ雨が止むかどうか、との予報だった。

 狭いベランダの足元のほうにふと目を遣る。すると、視界の斜め下のほうに、色素の薄いさらさらの髪を持った人間の頭部が見えた。ぎょっとして再度よく見てみると、先ほどのセーラー服の女の子が窓を背にして座り込み、自分の膝を抱いて顔を伏せていることが分かった。

「…………」

 私が言葉を失ってそのまま動けずにいるうちに、視線に気付いたのか、少女が顔を上げる。硝子玉のような丸い目が私を捉える。その瞬間、私の目には、彼女の姿と中学生の頃の自分の姿が薄く二重写しになって見えた。そのまぼろしは、ひどく怯えた目をしている。

 私は軽く頭を振ってその幻影を振り払い、ひとつ息をついて、あらためてセーラー服の少女に話しかけた。

「……さっきはごめん。とりあえず、入ったら?」


 少女はベランダの窓から、遠慮がちにそろそろと部屋の中に入ってきた。彼女が歩いた後に、泥や水分の混ざった足跡はついていなかった。彼女は部屋の中をぐるりと一周見回してから、机の上のノートパソコンを片付けようとしている私と目を合わせて口を開いた。通りの良い涼やかな声だった。

『あの……。ありがとう、おねえさん』

「喋れるんじゃん。あなた、名前は?」

 少女は斜め上に視線を遣って、『えーっと……』としばらく考え込む。

『多分、タカガキ ミヤコ。お宮の子って書いて、宮子みやこ

「多分?」

 私がそう尋ね返すと、彼女――宮子は『分からないの』と不安げに視線を彷徨わせて首を振った。

『あたし、気付いたらこの町にいて。雨の中を歩いていたら、名前だけはぼんやり思い出せたんだけど、どうして死んじゃったのかも思い出せないし、この町の景色にも全然見覚えがないし、誰もあたしに気付かないし……途方に暮れてたの。あたしのことが見えたの、多分おねえさんが初めてだったと思う』

「……伊吹」

『え?』

「月島伊吹。私の名前」

 簡潔にそう答える。宮子は呆けたような表情で私を見ていたが、一秒遅れてその意味を理解した途端、分かりやすく顔を輝かせた。

『イブキさん……イブちゃん?』

「クリスマスイブじゃないんだから……」

 私がそう小声でぼやいたのを聞いているのかいないのか、宮子は『イブちゃん、かわいい響き』と楽しそうに繰り返していた。どうやらたった今、私のあだ名はイブちゃんに決定したらしい。まあ何でもいいけど、と私が半ば諦めて溜息をついていると、宮子はまた表情を変えて、うーんと考え込み始めた。

『それにしても、なにか思い出せないかなあ。中学校に通ってた記憶はふんわりあるんだけど、他のことがなかなか……』

 言いながら、宮子は小さく欠伸をして目を擦り始める。どうやら、あまり一度に多くのことを思い出そうとすると、脳に負荷がかかって眠くなるようだ。私はそれを見て、一応宮子のぶんの客用布団を出してきてカーペットに敷いてやった。幽霊に布団での睡眠が必要なのかは定かでないが、客観的な見え方として、仮にも成人している自分が中学生くらいに見える女の子をそのまま床に転がしておくのはいかがなものかと思ったからだ。

 入浴と就寝準備を済ませてワンルームの居間に戻ってくると、宮子は行儀よく布団にくるまって既に寝息を立てていた。こうしていると、本当に生きている人間と変わりないように見える。私は夏用の薄い掛布団からはみ出ている宮子の手にそっと指を近付けてみた。すると、どういう仕組みなのか、彼女の手に触れること自体は出来たが、当然のように体温は無く、ただ氷のようにひんやりとした柔らかい物体がそこに在るだけだった。その夜、私は眠気が訪れるまでのあいだ、間接照明で薄暗くした部屋の中で宮子の寝顔を何となくじっと見つめていた。


 翌朝目を覚ますと、宮子の姿はどこにも無かった。カーテン越しにおよそ一週間ぶりの朝日が差し込んでおり、窓の外では小鳥が鳴いている。天気予報どおり、雨は夜中のうちに上がったようだ。

 この日は梅雨真っ只中にしては好天を保っていたが、やはり夕方近くになると分厚い雲が増えてきて、サークル活動を終えて帰路に着く頃にはついに雨がぱらつき始めていた。今日は夕食も学食で済ませたし、買い物は明日にまわそう。私は傘を腕に挟んで時計に目を遣り、地面の水たまりを避けながら下宿先を目指した。

 傘についた水滴を軽く払い、どれだけ気をつけても踏み込むたびに軋むような音が鳴るアパートの階段を上る。一番上の段に右足を置いたところで、私は自分の部屋の前に誰かが座り込んでいることに気付いた。紺色のセーラー服に肩までのさらさらの髪、学校指定なのであろう白い三つ折りの靴下。宮子だった。彼女の横顔はどこか不安そうだ。その横顔をじっと見つめていると、やがて彼女は私の視線に気付き、また分かりやすく顔を輝かせて立ち上がった。

『イブちゃん』

 人好きのする笑顔でそう話しかけられ、私は溜息をつきながらも宮子を部屋の中へと促した。


 次の日は、朝になっても宮子が姿を消すことはなかった。宮子は客用布団をきれいに片付けて、窓の外に目を遣りながら『今日も雨だね』と呟いた。

 私は薄々感付き始めていた。たぶん、宮子は雨が降っているときにしかこの世に現れることができないのだ。だから、私自身も梅雨に入ってから宮子の存在に気付いた。明日は梅雨の晴れ間になりそうだと天気予報で言っていたから、おそらく彼女は現れないだろう。


 また次の日。今日は一日じゅう曇りか薄曇りだったが、雨は降らなかったため、予想どおり、宮子は何時になっても姿を現さなかった。

 そのまた次の日は、今にも雨が降りそうな曇り。起き抜けのまだ回らない頭で洗面台の前に立って顔を洗っているとき、私は宮子の魂をなるべく自然な形で天へ送ってやる方法を最近の自分が無意識に頭の隅で考え続けていることに気付いた。

 そういえば、姉の友人が神職に就いているという話をいつだったか聞いたことがあるけれど、今回のケースの場合、必ずしもそういった方法で成仏させるのが最適な選択肢とも言えない気がする。本人の「この世への心残り」をきちんと解消してやることができなければ、きっといつまでも同じことが繰り返されるに違いない。

 もちろん、「梅雨が明けて雨が降らなくなってしまえば良い」というのも違う。それは次に雨が降る日まで問題を先送りするだけだ。根本的な解決のためには、そもそも彼女がなぜ雨の日にだけ現れるのか、その理由を紐解いて行く必要がある。そして、そのためには、彼女が若くして命を失ってしまった経緯を知ることも不可欠になるだろう。

 フェイスタオルで水滴を拭って、洗面台の鏡の中の自分を見つめてみる。そして、何となくそうしたくなって、鏡の向こうの自分の視線から逃げるようにふいと目を逸らした。


 その日の夜、掛け持ちの家庭教師のアルバイトを終えて雨傘を手に帰宅すると、宮子が部屋のドアの前で待っていた。外ではやはり雨が降り続いている。宮子を部屋の中へと促しながら、私はふと気になって、雑談がてら、雨が降っていないときの記憶はあるのかと尋ねてみた。宮子はすぐに首を横に振る。雨が上がった時点から次に雨が降ってきた時点までがぶつりとカットされて、それらが雑に繋ぎ合わされている感じだそうだ。

 翌日は土曜日だった。今日の予定はアルバイトだけなので、比較的時間に余裕がある。家を出るまでのあいだは、薄く音楽を流しながら大学の課題のレポートを進めることにした。宮子は私の近くに座り込み、背後の本棚の中身を興味深そうに眺めている。

 レポートを書き始めてしばらく経った頃、少し前にヒットした日本のコーラスグループの代表曲がパソコンから聞こえてきた。音楽アプリにCDを取り込んで、全曲をシャッフル再生する設定にしてあるので、古い洋楽の名曲に交じって、昔からよく聴いているお気に入りの邦楽もときどき流れてくるのだ。

『あ。“リーグル”?』

「そう。知ってる?」

 宮子は、この曲は知ってる、と頷いた。そういえば最近出た曲も買ったよ、と言って私が壁掛けのCDラックを目で示すと、宮子はその最新曲のCDジャケットを手に取ってみて、あれ、と声を上げた。

『なんか、あたしの知らない人がいる? でも、確か六人グループだったよね。女の人四人と、男の人ふたりの』

「そうそう。リーダーの人が健康の問題で休養になって、その前後に、サポートメンバーだった人が加入したんだよ」

『そうなんだ……』

 健康の問題と聞いたからだろう、宮子はしゅんとして睫毛を伏せた。そして、音楽が契機となって生前の記憶を少し思い出したのか、大サビに差し掛かっている楽曲に耳を傾けながら何気なく呟きを漏らす。

『綺麗な歌。この曲、ほんとに流行ってたよね。小学校の卒業の時のお別れ会で流れてた気がする』

 ああ、私の小学校もそんな感じだったかも。そう相槌を打とうとして、私ははたと動きを止め、目を見開いた。確かにこの曲は、私が小学校六年生か中学一年生か、そのくらいの時期によく聴いた曲だ。

「……ちょっと待って」

 セーラー服姿の中学生という先入観から、私は今まで宮子のことを、今年か去年か、とにかくつい最近亡くなってしまった、年下の少女だとばかり思い込んでいた。でも、当時のヒット曲の話が私とこんなにぴったり合うということは……。

「あなた、もしかして本来は私と同年代だったんじゃない?」

 唐突にそう言われた宮子のほうは、丸い目を真ん丸にして私を見つめ、ゆっくりひとつ瞬きをした。

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