遠距離恋愛

第6話

遠距離恋愛、二年目。

はじめのうちは、大丈夫だと思ったんだ。離れていたって、想い合っていれば、信じあっていれば。って。


だけど、そんな単純なものでもなかった。

ほんの少し、電話での声色が単調だったり、ほんの少し、受話器の向こうから女の子の声が聞こえるだけで、それだけで、気が気でなくなるほど不安になってしまうもの。


きっと、それは私だけでなく向こうも同じだと思う。


そうやってどんどんどんどん、見えない距離が広がっていって。少しずつ、電話の頻度も時間も減っていく。


……もしかして私たち、このまま別れちゃうのかな?


「……おーい、聞いてる?」

「えっ、あ、聞いてる聞いてる。 ごめん」

「でさ、その先輩が紹介してくれたバイトが」


別れちゃうのかな、そんなことを考えて、勝手に悲しくなっていた。


一緒にいた頃は、こんな風じゃなかった。

不安になることがあってもすぐにぶつけられたし、不安になってもそんなものはすぐ消してくれた。


……今は?

今は、今は、言いたいこと、何一つ言えない。いつからこんなうじうじしたやつになったんだろう、私は。


受話器の向こうから聞こえる声が、愛しい。


言いたいことは、言わなくちゃ。

ふいに、昔の強い私が、背中を押してくれたような気がした。


「でも掛け持ちとなるとさー」

「……ねえ」

「ん?」


言いたいこと押し込めて、すれ違って、終わりになんて、なりたくない。


「会いたい」


ふっと、私の中で何かが弾けた。


「会いたいの。もっと電話したい。顔が見たい。抱き締めてほしい。……好きなの」


想いが溢れて、声が震える。

怖くて、泣きそうになる。



「……ごめん」


沈んだ声で、謝られる。

溢れていた想いと言葉が、止まる。頭が、真っ白になった。


ああ、振られるんだ、私。



「俺最悪だな。彼女にそんなこと、泣きそうな声で言わせて。……本当は俺もずっとそう言いたかったのに。言うべきだったのに」


え、と声が漏れる。

受話器の向こうで、大きく息を吸い込む音がした。


そう言えば、彼が私に告白してくれたときも、そうやって一つ大きく息を吸っていたっけ。



「……週末、会いに行ってもいい?」


愛しい彼の声に、言葉に、小さく涙が溢れた。

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