第74話

怖くなるけど、もうそこまで来たら止めることもできなくて。


壊れそうな心臓のまま続ける。



「でもそれって誰に言われてもそうなのかもしれないって思って」

「そ、そうですよきっと」

「でも違ったんです斎藤さんだけだったんです。クラスの男子で検証済みです」

「クラスの男子に可愛いって言われたんですか、それはきっとチャラ男ですよロクな男じゃな」

「私が無理矢理言わせたんです」

「oh……」



斎藤さんが頭を抱えた。



「焦りました?」

「はい、いえ、いえ!……はい、いえ」

「どっちなんですか」



それきり斎藤さんは黙り込んでしまった。



なんだか斎藤さんが、分からなくなる。


いつも妙なほどにこにこしてるのに、私が斎藤さんに可愛いと言われてドキドキした、と言えば、途端に笑顔を消したり。


私がクラスの男子に可愛いと言われたと言えば、焦ったり。


期待して良いのか、良くないのか。

脈ありなのか、なしなのか。



本当に、振り回されてる。

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