第63話

ぽかんと口を開けて隆二を見下ろしていると、「閉じろ」と顎を上げられた。



「いけるって、何が」

「だから、脈あんじゃね?って」

「そりゃあ斉藤さん生きてるからね、脈くらい」

「つまんねーボケいらねえんだよ」

「うす……」



生意気になったもんだこいつ。


昔は夜中トイレ行くのが怖くて泣きながら私のこと起こして「お姉ちゃん着いてきて」って言ってきて可愛かったのに。



「おい百合聞いてんのか」

「いつの間にか百合って呼んでるしね」

「あ?」

「聞いてるよ。脈でしょ?あるわけないじゃんこんな小娘に」



言い切って、さっきみたいに手摺に肘をついた。


どんなポジティブ思考なら年上のイケメンモデルがこんなジャージ小娘に惚れるって思えるんだか。



「俺だって確信はねえけどさ、その話だと、少なくとも信用はされてるわけだろ?かなり」

「まあ……それはそうかもね」



曖昧に肯定するふりをしながら、顔はにやけた。


信用されてる?かなり?私が?

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