第57話
「お邪魔します、あ、ルンバだ。可愛い」
「可愛い……?変な趣味してますね。それ一週間くらい前に買ったんですよ。ルンバなんかどうでも良いから見てください」
「はいはい」
斉藤さんに腕を引っ張られてベランダに出た。
なるほどたしかに盆栽がある。
しかも一つじゃない、三つある。
「どうですか」
盆栽ほど感想聞かれて困るものってないよ。
ちらりと隣を見れば、やっぱりわくわくした目で私を見つめていた。
「いやなんというか、風格を感じます。お見事だと思います」
「分かります?さっすが前原さん!」
「あ、これとかこのへんが自然な美しさでね」
「そうなんですよ!」
どうやら私の言っていることは的を得ているらしい。
喋れば喋る程に斉藤さんのテンションが上がっていく。
「前原さんがここまで分かる人だとは。若いのにお見事です」
「はあ、私も自分で自分が怖いです」
突然「そうだ!」と顔を上げた斉藤さん。
すぐさま私に視線を合わせて「お願いがあります」とそれはそれは格好いいキメ顔を見せてきた。
瞬間、これは何を頼まれても私は断れないだろうと覚悟を決めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます