第26話

「それにその男、イケメンじゃん。何デートのお誘い断り続けてんだよお前の分際で」

「……好きでもない人とデートとか」



私が小さな声で反論すると、隆二は呆れたように大きく息を吐き出した。



「じゃあ誰か好きなやついんの?」

「別に今は」

「あ、隣の……斎藤さん?だっけ」



ぴくり、と肩が揺れた。



「何言ってんのあの人とは会ったとき軽く話すくらいしか」



慌てて取り繕ってみたものの、隆二はそれを見逃さなかったらしい。にやりと嫌な笑みを浮かべた。



「家に上がった間柄じゃん。俺は良いと思うよあの人でも。モデルだから売れたらがっぽり儲けるだろうしなあ、そうなったら玉の輿か~」



がっぽがっぽ、と呟いて鼻の下を伸ばす隆二は、金の亡者のよう。嫌だこんな小学生。



「玉の輿って、私は別に……」

「私は別に、そんなことで好きになったんじゃない。って?」



う、と一瞬言葉が出て来なかった。

隆二の笑顔がまたいやらしさを増す。



「だから違」

「まあそううまくいくわけないよなあ。あんなイケメンがお前になびくとは到底思えないし?」



隆二は私の肩に手を回しぽんぽんと叩きながら、何度も頷く。……ちょっと、むかっ。



「……分かんないよそんなの」

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