第12話

「交際の申し込みでしょうか」

「うんまあ……そう……」




富井くんは照れくさそうにはにかむ。

それは決して悪印象ではないしとても素敵だ。



だけどやっぱり私の中には、恋愛に踏み出すほどのエネルギーというものが存在しない。



「すみません。話したことない人とはお付き合いできません」

「……そう、だね。うんそうだよね」



眉の垂れ下がった笑顔と何度も繰り返される頷きは、逆に悲しい。

私も、罪悪感を感じる心はある。



「すみません」



ホーリーへの証明云々を抜きにしても、私は富井くんを振っていたと思う。


富井くんがイケメンだろうがブサメンだろうが、話したことあろうがなかろうが。



恋愛というのは、とてもエネルギッシュな人間のすることだと思う。私には、到底向いてない。


あとさっきから、徐々に教室の中からも外からも視線が集まってきてるから、早く解放してほしい。


富井くんは慣れてるかもしれないけど、私には非日常だ。



「いやいや俺も急でごめんね。そうだね話したことない人から付き合ってくれとか言われてもね。うん、じゃ……これから、見かけたら話し掛けても良いかな?」

「は?」

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