面倒が臭い

徒歩と自転車は、どちらが面倒か。

私は生粋のめんどくさがり屋である。

横着こそ生きる術なり！と、なんとか声に出さずにいるだけで、毎日欠かさず思っている。

うるう年はしっかり366日思っている。

何かを始める時、頭の中で想像し得る手順が多ければ多いほどげんなりする。

カレーライスを作るとして、野菜を洗って…ジャガイモとにんじんの皮を剥いて…などと想像している間に、すっかりくたびれてしまう。

こちとらカレーライスが食べたいだけなのに、カレーライスにありつくまでの手順が多過ぎる。

その点カップラーメンは良い。

湯を入れて3分、素晴らしく明瞭であるため、食べる前からくたびれなくて済む。

1時間ほどかけて作った料理を、ものの15分で食べ終えてしまうなど、計算が合わない上に許せない。

私はいつも旦那に、「こっちは1時間かけて作ってんだよ…味わって食えや…」と、文字通り伝えている。

こうして旦那は、大したことないカレーを震えながら食べる羽目になる。

話が逸れたが、徒歩と自転車である。

私は割りと何処へでも歩いて行く。

それは手順が少ないからである。

玄関に行って、靴を履いて、ゴー！

以上である。

その点、自転車である。

玄関に行って、靴を履いて、家を出て、駐輪場へ行って、自転車の鍵を解いて、前輪を留めている鍵も解いて、ゴー！

である。

出発するだけで手間がかかる。

この手間を想像するだけで、私は家を出る前からカレーライス同様げんなりし、「もう良い、歩いて行く」となる。

先日は、往復90分歩いて役所まで行ってきた。

後悔はしていない。(雨降ってた、ふざけんな)

そのことを先日何気なく人に話したところ、「たぶん変やで……」と気まずそうに言われた。

これまでわざわざ口に出していなかっただけで、自分の中では当たり前だったことが、人と話して初めて「？？？？？」となった。

よくスーパーに行くだけで車を出す人がいる。

10キロの米を買うわけでもないのに、なぜ手間がかかることをするのかさっぱり分からない。

特に車は、移動中も頭を使わねばならない。

頭など一秒も使いたくないのに、様々なルールと運転手順を守り、さらには周囲にも気を配らなければならない。考えられない。

その点私は清々しい！

運転免許を持っていない！

体の赴くまま歩くだけである！

「それをみんな行程として数えへんのよ

車で行く、で一行程やん

自転車に乗る、で一行程やん」

目から鱗である。

「その歩いた90分あったら何できる？

90分歩く方がよっぽど面倒やわ」

面倒とか何なのか…

私は今までどれだけの時間を無駄にしてきたのか…

そもそも面倒臭いって何だ…匂うのか…面倒とやらは匂うものなのか…

考えれば考えるほど分からなくなり、生粋のめんどくさがり屋の私は、考えることすら面倒臭くなった。

スーパーから帰り、カレーの支度をする。

外で着ていた洋服を全て脱ぎ、アウターは消毒し、外出後スマートフォンは必ずアルコールで拭く。

「なんでそれは面倒じゃないん

マジで訳わからん」

私たちは分かり合えないまま、同じカレーを食べる。