第16話

キャロルが吐き終わったようなので、2人はキャロルの上半身を倒し寝かしてあげました。ティナはキャロルの口のまわりを拭いてあげました。キャロルは相変わらず何も喋ることなく、目を閉じたままです。



マークはこれからキャロルがどうなってしまうのか、不安で心配でドキドキしていました。



そのうちティナが救急車を呼ぶことにしました。



マークは男の子だけあって、車や飛行機、船などの乗り物が好きです。さすがに最近は大きくなってきたので、興味の対象がスポーツやゲームなどに変わってきましたが、もっとちっちゃい頃は救急車、パトカー、消防車などが好きでした。そのうちの救急車に、今日生まれて初めて乗れるのです。



家に到着した救急車に、キャロルが運び込まれました。ティナとマークも付き添いとして一緒に乗り込みました。正直な話マークは少し嬉しく思いました。



救急車の中でも、キャロルは相変わらず寝たままです。その表情は苦しそうに見えます。ティナは救急隊員に、キャロルの病状を冷静に詳しく説明しています。救急車の前方からは無線で話している音が聞こえてきます。別の救急隊員が、ティナの説明やキャロルの様態から判断し、最も適切で最寄りの病院を探しているようです。



緊張感、張り詰めた空気。マークは救急車に乗ったことを喜んでるどころではなくなりました。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



お医者さんの治療が終わりました。病室でキャロルが寝ているベッドの横で、マークとティナは折りたたみイスに座って見守っていました。呼びかけても、やはりキャロルが返事をすることはありません。ティナはハンカチを目に当てることが多くなりました。



マークはじっとキャロルの顔を見つめました。以前のキャロルはふっくらしていたのに、すっかり痩せ衰えてしまったなあとしみじみ思いました。



そして苦しそうな表情で寝ているキャロルの顔を見てマークは「グランマはもう助からないんだろうなあ」と子供ながらにそう感じました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る