6枚切り食パン

 お馴染み、有名メーカーのリョーユーパンが製造し、コープとのタッグで販売された6枚切りの食パンである。 


 小麦粉をお湯でこねた湯種を生地に混ぜているのが特長であり、値段も200円単位と普通の食パンより高め。

 しかしその値段に恥じない、とんでもない風味に化けた食パンでもある。


 どうせ食パンなんて値段で釣っただけで、中身は一緒だよなと思いながら、前回のスライス食パンを食べて、コープのパンはマジで美味しいという底力を思い知り、今回はワンランク上のこの食パンを手にしたのだが、食べる前まで震えが止まらなかった。


 コンビニの値段並みで販売しているこの高めな食パンにも、何かしらのドッキリな仕掛けがあるはずと感じていたからだ。


 それはトースターで焼いた、この焼き立て熱々の食パンを一口食べただけで分かる。

 ふわっとしたほのかな甘さの食感で、噛んでいると、あっという間に口の中でパンが溶けてなくなるのだ。

 あの屋台で食べる綿あめをこの食パンに例えたような感じで……これは本当に食パンなのか、パンの形をした空気のパンじゃないのかと思わせてくれる。


 スライス食パンとは違い、ミミの存在があり、その部分はサクッとしているが、このミミさえも舌の上で溶けてなくなり、この食パン、もう噛む必要もないのではと……。


 そう、今流行りの湯種を売りにした食パンだけに驚きが止まらない。

 食パンは噛んだらペースト状になって、マーガリンと混じり、そこからパンの味が広がっていくのが醍醐味であると、完全に食パンの食感をコピーしていたからだ。


 なるほど、スライス食パンよりも美味なのに、いくらカタログで湯種入りのパンと強調しても、こちらの方が値段が高めなだけに広告の文面だけでは伝わらないわけだ。

 こればかりは、このパンを実際に食べてみないと始まらない。

 こんなに新感覚な口どけで美味しい食パンはパンの専門店じゃない限り、そうそう出会えるものではない。

 またもや、コープの食パンは素晴らしいと首を縦に振ってしまった。


 食べると砂糖菓子のケーキのように、みるみる溶けてなくなる不思議な食パン。

 それにも関わらず、表面の生地はしっかりしていて、お腹の中で小麦が広がっていくせいか、十分に胃袋は満たされる。


 これまでの噛んで味わう食パンではなく、飴細工のような、お菓子感覚にもさせられる本作。

 デジタル配備の生産工場にて、次々とベルトコンベアでこの食パンが流れていく中、独特の手法で攻める、この6枚切りも侮れない。


 スライス食パンでサクッと、この6枚切りではトロリと。

 今回のコープの食パンも素晴らしい出来だった。

 このパンと出会えたことに心から感謝し、是非ともスライス食パンとローテーションを組んでリピしたい。

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