第18話
そういって涙ぐんだ。 それを見て円陣を組んでいた隊員たちは静かに持ち場に戻った。
するとミーシャは「マリア、お母さんてよんでいいか? 母さん泣かないで、みんないいやつなんだ、ただ不器用な生き方しかできなくて、」
マリアは涙をぬぐい「うんいいんだよ、ごめんね ミーシャ、母さんはお前やみんなのこときっと守ってあげるよ必ずねっ」
マリアは気を取り直し顔を上げて叫んだ。「じゃぁみんなぁ! 行きましょうか、ベルリンへ!」「おおっ!」
こうしてマリアの部隊は進撃を始めた。 そしてクルンカの町の近くで、民家に隠れていたドイツ軍の88ミリ対戦車砲2門を発見し、
それを破壊して街の中に進入していった。 その時、瓦礫の山の中からマリアの乗っていたt-34・85戦車に向かってタイガーⅡ戦車2台が
襲い掛かってきた。 次々と砲火を浴びマリア戦車が破壊された。 そのことに気がついたミーシャのスターリン戦車がすぐに駆けつけ、
タイガーⅡ戦車を122ミリ砲で撃ち破り蹴散らした。 負傷したマリアを燃え盛るt-34・85戦車から助け出したミーシャは、
「母さん! しっかりして! ミーシャだよ、わかるか? 死なないで母さん!」 マリアは火傷をおい息も絶え絶えになりながら、
そっとかすれるような小声で「ミーシャあの歌を歌っておくれ、」 といって静かに目を閉じた。「母さん! 母さん! なにを歌ったいいの?
どんな歌なの? おしえてくれー!」 と叫んだ。 マリアは致命的な重傷をおい、2ヶ月後この負傷がもとでマリアは帰らぬ人となった。
彼女の亡骸はスモレンスクの栄光の壁の下に埋葬され、戦後「ソ連邦の英雄」の称号が贈られた。
そして彼女の死後、彼女の部隊でもあるスターリン戦車部隊には彼女をしのんで正式に「ボイェバーヤ・ボドルーガ(戦友)」部隊と名づけられた。
そして戦況は変わりかって鉄のエリート集団と恐れられていたナチスドイツの戦車兵は成長したソ連戦車兵の前に消耗していった。
ドイツ軍にどんなエース(撃破王)が現れようとソ連戦車の勢いを誰にも止めることはできなかった。 ミーシャの率いる戦友部隊は
ドイツ国内でのドイツ軍の最終防衛ラインを突破しついにベルリン市内に突入した。
めざすは国会議事堂、市街戦は以外にもナチス本隊は少なく北欧の枢き国の外人部隊の激しい抵抗に遭いながらも
ソビエト戦車部隊はチームワークで次々と撃破し戦車兵としての腕前も一流になっていった。
そしてついにヒトラーが自殺し、ドイツが降伏したとき、ブランデルグ門に親衛戦車部大隊とソビエト軍は結集し
戦争に勝利した戦車兵の歌声がこだました。そしてミーシャと戦車クルーたちは集い口々に静かに歌い始めた。
「マリアーっ、母さんやったよ! 俺達はついにベルリンまでやって来たんだ、戦争に勝ったんだよ、聞いてね、俺達の歌を!」
と叫びそして明るく「カチューシャ」を歌い始めた。「りんごの花ほころびー川面に霞みたつ、君なき里にも春は忍びよりぬ、
君なき里にも春はしのびよりぬ」 と力の限り歌った、遥かなる母にささげる様に。 こうして主婦マリアの戦争は終わった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます