約束しない「また今度」

　彼が、離婚すると言いながら10年。　彼が、ケンカばかりでもう嫌だと距離を置いて半年。

　お互いに疲れた。

　私も深く傷ついた。　彼のことも深く傷をつけた。

　彼は、もう私の事を考える事を辞めている。　疲れるからと……。

　私も疲れた。　一緒になりたい気持ちと、もう何も望まなない気持ちのはざま。

　子供の頃から、父親が怖かった。　何かに隠れながら、その他大勢にまぎれてニコニコして生きてきた。

　辛い時は、心を殺せば生きてこれた。

　40年も……。

　あなたは、私が心を殺さずに居れる唯一の人だったけど、　心がまた、死のうとしている。

　私は、自分で自分を愛して、自分を幸せにするの。もう何も欲しがらない。自分の欲しいものは自分のために。疲れた時や、落ち込んだ時も私が自分に寄り添ってあげる。　無理に元気になれなんて、自分に対してもう言わない。

　彼に離婚も何も求めない。　会うことさえも。　電話もラインも、何もかももう求めない。　

　だから、あなたは何も考えずに、私がいなくても問題のないあなたの世界で苦しくなく、幸せに生きてください。

彼が居ない事にも慣れてきて、元気にしていたのに。　普通に笑いながら、癒される時も大変な時も。　ちゃんと自分で自分に寄り添ってやっていたのに。　もう大丈夫かなって思っていたのに。自分の好きなことをしながら、良い人に出会えれば再婚もありだし、　出会えなければ1人気ままに生きていくでも良いし。

　それなのに……。誕生日の電話の最後に、

約束しない「また今度」　

　涙の意味がわからない。本当にわからない。　ただ、とまらない。熱い涙だけがどんどんこぼれてくる。

　どうして涙が止まらないの？

　いつもは、ちょっとでも自分の誕生日にワクワクしていたんだけど。今回は、どうしてか自分の中でもただの一日だった。

　子供も大きくなって、自立している。

　好きでもない人と結婚をした若い時の自分。結婚生活でも、愛されている実感何てなかった。

　もう、充分一人で乗り越えてきたから……。残りの人生くらい、どんなに辛い時も、二人で乗り越えられたなら。でも、自分を愛し自分で解決して、自分を自分で幸せにすることが私にはできないから、ダメなのでしょうか。

　身も心も満たされる、そんなパートナーを望むことからの脱却。何かを望むことは、底の抜けたバケツでしょうか。

　約束しない「また今度」

　彼の立場からなら、ポジティブな意味だろう。いつでもまた今度ね。

　でも、待たされる立場でこの言葉の鎖は、

　捕獲用の罠のように、食べ物もなく動くこともできず　ただ死を待つだけの動物のよう。

　何もできない。

　そんな恐ろしいことに気が付いた涙なのかもしれない。