第34話

あれから一年が経ち、私のお腹には新たな命が宿った。


『あっ、今日はバッチリ見えましたよ。女の子ですね』


性別が分かる時期に入っても手で隠してしまったり角度が悪かったりでなかなか判別できなかった。


今回も空振りかもとあまり期待をせずに行くと、先生にそう告げられた。



「女の子か……」


定期健診でそう告げられてから、尊さんはずっと上の空。


今もソファに座りそう呟いては嬉しそうに顔を緩ませている。


「いや、兄貴その顔ヤバいっすよ。怒んないで聞いてほしいんっすけど、デレデレでキモいっす」


すると、一誠くんを連れて我が家に遊びに来ていた松ちゃんが呆れたように言った。


「……あ?」


「ははっ、冗談っすよ。でも、そんな怖い顔してたら「パパこわ~い!」って娘ちゃんに嫌われますよ?」


「……確かにそうだな。怖がらせたら可哀想だ。そういえば、この雑誌に書いてあったんだが、父子教室というものがあるらしい。俺も参加できるのか?」


「もちろんです。保健福祉センターで定期的に開催しているみたいです」


「あ、俺知ってるっす!妊婦体験とかいって、腹になんか重たいやつつけるんっすよね?」


「うん。そういうのもやるし、赤ちゃんが生まれてからのおむつ替えとか沐浴の練習もするみたいだよ」


「そうか。今後の為に参加するのもありか……」


「え、てか兄貴みんなの前で腹にでっかいのくっつけて妊婦体験するんすか?」


「ああ。男の俺には莉緒の大変さが分からないからな。経験したからこそ分かることもあるだろう」


尊さんの言葉に、松ちゃんがケラケラと大笑いした。


「いや、マジ偉いっす!!でも、俺想像しただけで無理っすよ!だって元若頭のあの兄貴が妊婦……あははは!!最高の父っすわ!!」


「ふんっ、勝手に言ってろ」


松ちゃんにからかわれてムッとしたように顔を背ける尊さん。


それと同時に護と一誠くんがリビングに飛び込んできた。


「みてみて~」


「護、おいで」


護を抱き上げる尊さんにそっと近付いていく。


「なんの絵を描いたの?」


「かぞく!パパとママと、まもるとあかちゃん!」


クレヨンで描かれた絵の中でニコニコ笑顔の私達。


「家族四人か」


「上手にかけたね。すごいよ、護」


「ふふふ。はやくあかちゃんにあいたいなぁ」


「もうすぐ護もお兄ちゃんだね」


尊さんの腕の中の護の頭を撫でながら微笑む。


「ちょいちょい、そっちだけなんかふわっとした楽しそうな世界に入るのやめてもらっていいっすかね?でも、桐生家が幸せそうでなによりっすけど」


松ちゃんの言葉でハッとして私達は目を見合わせて笑い合う。


ずっと、こうやって笑顔の絶えない家庭にしよう。


「ああ、今の俺は最高に幸せだ」


「私もです」


「ぼくも~!」


尊さんは護を抱きしめながら私に優しく微笑みかけ、大きな手で私のお腹をそっと撫でたのだった。



【END】

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