第21話 G.P.S.覚書〈その9:詠唱〉
シスター・フィーナと
さして知能は高くないと言われております
「うふふ…… 神の祝福を受けた正義の盾に 邪悪な攻撃は通用しません。さっさと裁きをお受けなさいッ」
シスター・フィーナは
「うっしゃッ! 1匹目ッ! 次は オマエだッ ジーナんとこには 行かせねぇぜッ」
フィンのヤツも1匹を倒し 2匹目の相手をしながら もう1匹が後衛に接近しないように立ち回っている模様。
逆にキールさんの方は 短剣を持った
「うぉわッ ヤッベ。うらッ くたばれよっ。── ひぇッッ!?」
キールさんの突き返しの一撃は 空を切り その隙に斬り掛かる
「キール 大丈夫っ?」
手いっぱいのキールさんの横を抜けようとする別の
敵は
こちらは5人。
戦線は膠着と言うよりは 少し押され気味。
やはり
母愛用の革のブックカバーに包まれた
「Ena elt endr……」
周りの魔素に意識を集中しますと
現在の
淡い紫色の燐光を放つ呪紋に右手の指で触れ
ここで 先程の一工夫が生きて参ります。
気力 集中力 引いては魔力の消耗は増すのですが 敢えて 自身も含めた〈お仲間全員を対象〉に設定致しました。
何故なら その設定を反転させるだけで〈お仲間以外を対象〉に設定できるのでございますから。
僅か4ヶ所の呪紋を描き換えるだけで 魔方陣が完成致します。
しかし ここからが正念場。
まだ 使いこなせてはおらぬ魔法。
しっかりと呪文を発声して 魔素を練り 霊子を導かねばなりません。
「我が真なる名 ガイアナ・プブリウス・セクンディアナの名によって命ず… 始源なる魔素よ 我が命に従い 万物の理たる霊子を導け……」
集中力 気力を細心の注意力をもって魔力に練り上げ 詠唱に繋げます。
「──ッッ 痛ッてぇッ」
キールさんの悲鳴が聞こえます。
視線を送り 状況を確かめます。
見れば 太股に
ですが ここで心を乱す訳には参りません。
「……reviriwas walre shi ghyunam Helr ahm Yr tui relkus……」
「必ず地獄へ墜ちて下さいね。悪鬼討滅 〈
「……avikeros es Rgh aws ahm welt……」
シスター・フィーナの にこやかな声と共に放たれる一撃が 攻撃を受け止めた棍棒を叩き折り そのまま
そのタイミングでアイリスさんの
キールさんの方を振り返られた シスター・フィーナの祈りの言葉。
「天なる父と 慈愛と癒しの聖女ヌスラの名において この者の傷を治し給え。〈
「……dyulk et Yr tui welkus ryl iophys……」
キールさんの傷は 癒えた様子ですが 今度は体勢を崩したアイリスさんに棍棒を構えた
更には シスター・フィーナが祈りを捧げられたその間隙を縫って 右肩を傷めていた
フィンも目の前の
「……Es bios feruys ena elt endr!」
戦線は崩壊しかけておりますが 呪文は完成間近。
中空に浮かぶ魔方陣は 紫電の輝きを放ち 小さな稲妻が 微かな放電を見せております。
ここまで練り上げた呪文を中断するなど出来ぬ相談でございます。
膝裏が崩れ落ちるような恐怖を感じますが 偉大なる〈真語魔法〉の威力を信じ 最後まで詠唱を行い切ります。
「紫電の雷よ。無数の槍刃となりて 我が敵を貫けっ!〈
呪文の完成共に
やっ やりましたっ。
やり切りました……っ。
ほぼ全ての 気力 集中力 魔力を注ぎ込んだ
ですが… ですが なんと言うことでしょう……。
あろうことか
身に迫る生命の危機と恐怖。
しかしながら
尻餅をついた姿勢のまま
「───させるかよッ!」
フィンの叫び声が聞こえます。
見れば 極小の魔方陣を展開し その片手半剣には
「喰らえーッ! 必殺!〈
ああ……。
そうです。
そうなのです。
このデリカシーの欠片も無い赤毛猿は……。
小さな頃から いつも傍にいた幼馴染みは……。
幼い日々からの幾多の場面が甦り 脳裏を廻ります。
今までの人生で一番の窮地を救われ 気が抜けてしまったのかも しれません。
やっと息が整い 声を出せるようになった
ここで 言うべき言葉で無いのは 重々承知しておったのですが。
「……ダッサ~ッ。ハァ ハァ……フィン アンタの技名のセンス マジでゴミ。ガキっぽいにも程があるわ…ハァ… ハァ……。ホント ヤバい程 ダサいから…。1回 死んだ方が いいんじゃない?」
ああ。
やってしまいました。
母に告げ口されたら また お説教です……。
………。
……。
…。
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