章5 カイセイ

なんで

どうして

何が起きてるの



姉はそのまま膝を付きナイフを抜き倒れる。

液体はどんどん広がっていく


「早く治癒魔法を!」



脳の処理が追いつかない。

それに治癒魔法と言えど、貫通してるんだから流石に無理だよ…





その後、こちらに駆け寄り治癒魔法を姉にかけてるもう一人の私がいる。


ゴーグルで見えないはずの目が合った気がした。



『…つまらんな。もういい、飽きた』

そんな言葉だけが聞こえた。


『孫よ、ここは爆破処分する予定だ。後は好きにしたまえ』

博士は奥へと消えて行った。




敵もある程度全滅できたのか、周りが静かになる。

それも一瞬で、次に機械音で3分後には爆破すると警告音が鳴り響く。



そう言われても周りに出口はない。



「しっかりしろ!」

肩を強く握るのは前髪が白く無い、この世界のファイさん。


「今コイツがアイツを治してるし、きっと治るから!お前は此処からの脱出方法を考えてくれ!」

そっか、とりあえず出なきゃいけないか。


「プラパさん、出口の扉や入ってきた扉を開けたりすることはできませんか?」

『今探してる』

少し苛立つ声で帰って来る。

私も壁に近づき入ってきたと思う壁を調べる。


もう一人のファイは博士が覗いていたガラス張りの壁を炎魔法で攻撃するが、びくともし無いようだ。


『あと一分を切りました…』

エルさんの声は震えている。



「…プラパさん、もう逃げて下さい。」

『出来るわけ無いでしょ』

「私達は防護魔法で爆破を凌ぎますので、どうか」

『爆弾は何個も仕掛けられてる。魔法で防げるほどの威力じゃないわ』

『それにあと数秒で逃げても遅いし、構図見るとこの部屋だけ凄く頑丈に作られてるんだよね』

『そゆこと、アンタ達は助ける』



「そうだ、移動魔法で抜けられませんか?」

「ワープなら一番初めに試しましたが無理でしたわ。遮断術式が張ってるようです。

…このゴーグルのせいなのかも。治療しても意識が戻りません」

『あと10秒です』


『爆弾は壁と柱に多い。その部屋の中央が爆破の威力はマシかも』

「皆さん、部屋の中央へ!」


もう一人の私が手を引っ張って中央へ行く。

横たわる姉を置いて


いや、もしかしたらあれは姉にそっくりな他人かもしれない。それならきっと…大丈夫。

そう思い込むことにしても、後ろ髪を引っ張られる気持ちは拭えない。




『5…4…3……』


今にも泣き出しそうな声なカウントダウン。

防護壁を展開するのに集中してるもう1人の私。

隣で悔しそうな顔、後悔してる顔の2人。



『0』








青い空に一面黄金に輝く花が風でそよぐ。

いつか見た思い出の光景。



『グラズ』

『なに?』


『有り難う』

『どうしたの?』

『へへっ』



いつもの笑い。

いつもの話し方。

唐突の言葉。



『どうかキミは笑っていて』
















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