件名：東京都現実不全対策室生存者報告書第２１号

宛先：東京都知事　影山（かげやま）直人（なおと）

送信者：東京都現実不全対策室室長　久我山（くがやま）響一（きょういち）

送信日時：２０２５年６月１日１３時１２分

本文

当該人物は日比谷ヴォイド（※注１）にて、本日１２２３時に保護され、携帯していた身分証等から火狼（かろう）神夜（しんや）（３１歳男性）と特定された。男性の生存例としては本日１２１２時に保護された第２０号生存者影山（かげやま）刀魔（とうま）に続いて２例目。

当該人物については、５月５日以降、日比谷ヴォイドにおいて生存者救助活動中のヴォイドルーラー隊に少なくとも１４回保護を求めている点、１４回全てにおいて原因不明の崩落に見舞われている点及び１４回の接触全てにおいて１名の少女（※注２）を偶然保護したと主張してヴォイドルーラー隊に引き渡している点を特筆すべきである。

本日１１４７時の遭遇位置がヴォイド外縁付近であったため、同時刻に引き渡された第１９号生存者穂村（ほむら）明日香（あすか）の安全確保後、ヴォイドルーラー隊が崩落位置まで再出撃、活動限界直前に救助に成功した。

当該人物はヴォイド内で無装備かつ組織的な支援もない状況で１ヶ月程度の期間生存したのみならず、東京都現実不全対策室が救助した２１名のうち３分の２を事実上単独で救助している。（※注３）

この実績とそれを可能とするヴォイド耐性を考慮し、報告者は当該人物をヴォイドルーラー隊に入隊させることを提案する。

※注１：２０２５年５月３日午前１１時１１分の世界同時多発現実不全現象において、日比谷公園を中心として発生した大規模ヴォイド。

※注２：１４回の遭遇において各１名の合計１４名。生存者報告書第１号から第３号、第６号から第９号、第１３号から第１９号が該当。全員が非常に高いヴォイドルーラー適性を有し、志願手続中の第１９号を除き、現在全員がヴォイドルーラー隊に所属。

※注３：体力とヴォイド耐性に特に優れる生存者第７号朝倉（あさくら）灯奈（ひな）の活動限界が約６時間であることに留意されたい。

件名：Re:東京都現実不全対策室生存者報告書第２１号

宛先：東京都現実不全対策室室長　久我山響一

送信者：東京都知事　影山直人

送信日時：２０２５年６月１日１３時４３分

本文

報告内容を受理しました。

久我山三佐の提案を承認します。

当該人物に現状を説明し、入隊を促してください。

ただし本人が拒否する場合、これを強制しないよう留意してください。

適任者がいれば久我山三佐が直接実施しなくても構いません。

件名：Re:Re:東京都現実不全対策室生存者報告書第２１号

宛先：東京都知事　影山直人

送信者：東京都現実不全対策室室長　久我山響一

送信日時：２０２５年６月１日１３時５２分

了解しました。

第二班班長が適任であると思われます。

なお、自分は現在、シビリアンコントロールの原則を維持するため自衛隊からは籍を抜いており、三等陸佐の身分を失っております。

何が事態終息後の公式記録となるかわからない現状においては、メール等では特にご注意ください。