冬の陣から夏の陣へ

第42話

━━希望元年の冬。


徳川珠美が、総勢二十万人の女生徒を動員して、大坂女学園を攻めて来た。

冬に攻撃をして来たので、《大坂冬の陣(おおさかふゆのじん)》と呼ばれた。


最初、真田未央奈は、他の女生徒達から信用されていなかった。


━━姉の真田美彩が徳川方にいたからである。

未央奈が姉と結託して、裏切るのではないかと思われていた。

この真田丸と呼ばれた校舎も、寝返りの準備だと疑われていた。


しかし未央奈は、豊臣蓮加を守る為に全力を尽くした。

真田丸から一斉砲撃を食らわせて、徳川軍を寄せ付けなかった。


豊臣、徳川両軍共にかなりの犠牲者が出たので、豊臣と徳川は和睦した。

その時に色々と条件を出され、大坂女学園の周りの堀は埋められ、更に真田丸も取り壊された...。



━━希望2年4月。


それぞれの学年が一つ上がった。


未央奈は、正式に大坂女学園に入学した。

誕生日がすぐに来たので、普通自動二輪車の免許を取った。


未央奈は蓮加に、大坂女学園内にある車庫に呼ばれた。


「蓮加様、何でしょうか?」

未央奈が訊いた。


「未央奈さんに中古で申し訳ないけど、誕生日プレゼント。」

蓮加は言って、未央奈にバイクを見せた。


━━赤く塗装されたカワサキNinja 400Rだった...。


「お姉ちゃんが乗ってたバイクだよ。

未央奈さん、赤が好きだから赤く再塗装したんだ。」

蓮加は未央奈を見て、

「未央奈さんに乗って欲しいの。」

と言った。


「そんな大切なバイクを...。」

未央奈は驚いた。


「大切なバイクだからこそ、未央奈さんに乗って欲しい。」

蓮加は言った。


「でも...。」

と、未央奈は言葉を濁した。


「どうしたの?」

蓮加が訊いた?


「私は一年生だから、原付バイクしか乗れません。」

と、未央奈は答えた。


「そんなの関係ないよ。

女子高生同士で勝手に決めたルールでしょ?」

蓮加は微笑して、

「免許があるなら、乗っちゃえばいいんだよ。

違反じゃないんだし。」

と言った。


「ありがとうございます。

蓮加様、このバイクに好きなマークを入れてもよろしいでしょうか?」

と、未央奈は訊いた。


「勿論、だって未央奈さんのバイクだもん。」

蓮加は微笑した。


━━未央奈は、ある決心をした...。



冬の陣の後、蓮加達は、戦で壊れた学校の門や壁を修復していた。

冬の陣の時に集まった女生徒達は、五万人くらいまで減ってしまったが、戦の後も学園内に残っていた。

それらの事について葵会が、


「戦の準備をしている。」

と言い出した。


そしてまた、徳川珠美をけしかけたのだ。


━━珠美は、再び大坂女学園を攻める決心をした。

《大坂夏の陣(おおさかなつのじん)》の始まりである。



5月5日の夜、大坂女学園付近の神社で未央奈は、姉の真田美彩に呼び出されていた。


「珠美様が、未央奈に信濃地区を譲るから、徳川方に来て欲しいとおっしゃってるわ。」

美彩が言った。


未央奈の武勇を知った珠美が、徳川方に寝返るように、美彩に説得を頼んだのだ。


「私は蓮加様を守ります。

信濃地区どころか、日本の半分を頂いても気持ちは変わりません。」

と、未央奈は断った。


「そう言う気がしてたよ...。」

と、美彩は苦笑した。


そして、二人は握手をした...。



5月6日、徳川珠美達の軍が再び、大坂女学園を攻め始めた。

総勢十六万五千人であった。


━━今回は、徳川七瀬も軍を率いて大坂女学園へと向かった...。


徳川幕府の軍は、幾つかに分かれていた。

その内、伊達蘭世達の軍は、奈良県大和(やまと)地区方面から大坂女学園を目指した。

その数、三万五千人。


━━豊臣軍は、大坂女学園の堀を埋められて、更に真田丸も取り壊されてしまった為、学園から出て戦うしかなかった...。


蘭世達の軍を迎え撃つのは、後藤伊織の軍二千八百人が先に攻撃して、後から未央奈の軍と、毛利みなみの軍が攻撃する予定だ。


しかし、タイミング悪く濃い霧が出てしまい、未央奈達の軍の到着が遅れてしまった。


しばらく待っていた伊織であったが、意を決して、大阪府河内地区道明寺(どうみょうじ)にある小松山(こまつやま)に陣を構えた。

それを蘭世達の軍が、包囲して攻めて来た。

二千八百人対三万五千人。


━━伊織達は、かなりの数の蘭世達の軍の女生徒を討ち取った。


しかし、数が違い過ぎる...。


いくら武が長けている伊織でも、どうにも出来ず最後は、蘭世達の軍に討たれてしまった。


後藤伊織、高校二年生。

武力に長けた美少女は、壮絶な最期を遂げた…。

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