戦友

第21話

この時代の、女子高生達の平均寿命は短かった...。

戦で命を落とす者が多いのも原因の一つであるが、それだけではない...。

戦で命を落とさなくても、度重なる戦などで、精神的・肉体的に弱ってくるのだ。


《ゴホッゴホッ》

と、武田真夏は咳き込んだ。


「真夏様、大丈夫ですか?」

と、真田純奈が訊いた。


「うーん、多分...。」

と、真夏は答えた。


「あまり無理をされない方がよろしいかと...」

純奈が言った。


「で、でも...。」

と真夏は言ったあとに、

《ゴホッゴホッ》

っと咳き込んだ。

「ゆ、優里達の想いを...。」

《ゴホッゴホッ》

真夏は、また咳き込んだ。


「真夏様、一度引き上げましょう。」

と、純奈が言った。


「わ、分かったわ...。」

真夏は、渋々頷いた。


そして、真夏達は信濃地区方面経由で、躑躅ヶ崎女子高へと戻る事にした。


━━その途中、真夏は吐血して倒れてしまった。

そして、信濃地区の駒場(こまば)総合病院に緊急搬送された。


━━大名は、各地にスパイのような者達を送り込んでいた...。


地方により呼び方は異なるが、主に《素破(すっぱ)》や《乱破(らっぱ)》などと呼ばれている。


素破や乱破は、実際の戦国時代で使用されていた言葉である。

ちなみに素破は、報道などで使われる《すっぱ抜き》の語源になったと言われている。



━━春日山女学院天守。


「一美様!!」

直江かりんが天守に来た。


「かりんちゃん、どうしたの?」

上杉一美が訊いた。


「武田真夏が緊急搬送されました!!」

と、かりんは言った。


上杉家の素破から、かりんに連絡が入ったのだ。


「えっ!?真夏が!?」

と、一美は驚いた。


「はい、信濃経由で甲斐に戻る途中だったそうです。」

と、かりんは答えた。


「......。」

一美は、少し間を置いて、

「かりんちゃん...。」

と言った。


「はい。」

かりんが返事をする。


「一緒に来て欲しいの。」

と、一美は言った...。



━━駒場総合病院。

真夏は、病室で静かに眠っていた。


原因は、日頃の戦などのストレスからくるものだった...。

こんな時に、真夏が討たれたら一大事なので、真夏の家臣達は、病院を囲うように警備していた。


すると、一台の黒い車が病院に入って来た。

━━黒のマスタング、一美とかりんの乗った車だ。


気付いた家臣達は、一美の車を取り囲んだ。

「真夏に...会いに来たんだけど...。」

車の窓を開けて、一美が言った。


「真夏様を討ちに来たのか!?。」

と、真夏の家臣が言った。


「違うわ。」

一実は答えた。


「嘘つけ!!」

家臣は、一実を睨んだ。


━━すると、

「お通しして!!」

と、大きな声がした。


━━純奈である。


「じゅ、純奈様...。」

と、家臣が言った。


「いいから、お通しして。」

と、純奈。

「し、しかし...。」

と、家臣は納得していない。


「真夏様がこんな時に攻め込んで来る程、一美様は卑怯なお方ではない。」

と、純奈は家臣を睨んだ。


━━家臣達は渋々、車から離れた。


「一美様、失礼致しました。

真夏様の病室は208号室です。」

と、純奈は一美達に言った。


「純奈、有難う。」

と言って、一美達は病室に向かった。


━━208号室。

一美とかりんは、真夏の病室にいた。


二人に気付いたのか、真夏が目を開けた。

「...一美...?...かりん...?」

小さな声で、真夏が言った。


「...ごめん...起こしちゃった?」

と、一美が言った。


真夏は、ゆっくり首を横に振った。


「...私...もう...駄目みたい...。」

弱々しい声で、真夏が言う。


「何言ってんの、大丈夫だよ。」

と、一美は言った。


「私の可愛いさ...全国に...知らしめたかったのに…。」

と、真夏は言った。


「そんな冗談が言えるなら、大丈夫だよ。」

と、一美。


「冗談...なんかじゃ...ないわ...。」

悪戯っぽく真夏が笑う。


「うん、そうだね...。

真夏は可愛いよね...。」

と、一美は言った。


真夏がスっと手を差し出して来た。

一美は、真夏の手を握った。


「一美とかりん達に...逢えて良かった。」

と、真夏。


「私も...。」

と一美。


「私もです...。」

と、かりん。


「もっと別な時代に、二人に逢いたかったなぁ...。」

最後の方は、聴き取るのがやっとな程、小さくなっていた。


「...来てくれて...有難う...。」

そう言うと、真夏は静かに目を閉じた。


「...ま、真夏...。」

と、一美は呼び掛けた。


もう真夏の声を聴く事はなかった...。

「真夏...。」

「真夏さん...。」

一美とかりんは涙を流した。


武田真夏、高校三年生。

可愛らしい花が散った日である...。

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