第4話

「こんにちは、朝陽くん。今日の朝どうして途中で居なくなっちゃったの?折角新曲を披露しようと思っていたのに…。」

「すいません。友達が課題移させてほしいって聞かなくて」


僕は笑いながら頭をかくが、琴葉先輩が許してくれるはずもない。


「本当、君は朝練に居なさすぎるよ。交流会も近いというのに。」

「出ませんけどね」


僕が朝の部活に居ないと、琴葉先輩は放課後クラスの前まで僕を訪れる。 そして肩につくくらいの髪を左右に揺らしながら、部室につくまで僕への不平不満を言い続けるのだ。 そんな憎めない先輩のおかげで、僕は毎日朝早く来なくてはならない。


「それだよ!そもそも...」

「もう着きますよ、部室。」


次の話題を遮られてイライラしているのは目に見えているが、敢えてスルーする。 部室では喋ったこともない部員たちが各々楽器を弾いていた。 僕はその間を縫うように通り抜けて椅子に座り、書き途中だった歌詞に手を付け始める。


ここに、僕を知っている人はいない。 皆自分のことに一杯一杯で、他人に興味を持つ人はほとんどいない。 琴葉さんみたいな人が珍しいのだ。


勿論、この神聖な場所がいつ汚されるのか不安に思う自分もいる。それでも、音楽から逃れることのできない僕に、部活を辞める選択肢はない。


その日、僕は一通り歌詞を描き終わったあと琴葉さんの新作達を一時間ほど聴き、へとへとになって帰った。

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