第10話 世間に出してはいけない!

会話の中で隼人が【ダンジョン果樹農園主】のジョブ持ちであり、紅葉がそこで栽培している果実で強くなっている事実を知った忍は頭を抱えた。

「その【新宿御苑富有柿】は世間に出しちゃいけない果実かもよ!隼人さん。私も隼人さんのダンジョン果樹農園に案内して下さらない?検証してみたいことが有るの!」


忍の勢いに驚く隼人と紅葉。

忍の言うのはこういうことだった。

「もしそれをスポーツ選手が食べたらとんでもない活躍をしてとんでもない記録を作ることになるでしょう。もしどこかの国が自国の全ての軍人に食べさせたら……」

「もし治癒のサクランボと合わせたら【無敵の軍隊】が出来上がってしまう!」

隼人は血の気が引くのを感じた。

幸いなことに【新宿御苑富有柿】はまだ協会に売ってはいない。食べたのは隼人と紅葉だけだ。


「問題はその効果がダンジョン内でモンスター討伐の時だけに発揮されるのであればまだ良いのだけれど……もしも通常の世界でも効果が出るのであれば大問題よね。犯罪者を作り出す恐れもあるわ」

「あるいは探索者のジョブを持っているものだけに有効なのかとか。本当に検証が必要なようですね」


 3人で隼人の農園に行くつもりだったが紅葉のスマホが鳴って、急用が出来て実家に帰ることになった。紅葉は悔しいような、不安な気持ちに陥ったが、母親からの頼みなので仕方なかった。紅葉は親思いの孝行娘なのだ。


紅葉が実家の鹿山県に帰って行ったのを見送って新宿御苑ダンジョン内の【ダンジョン果樹農園】に転移した。


忍も【鑑定SS】を持っていた。その鑑定をもってしても読み切れない項目が有るのを感じている。


「ねえ、この柿を食べたら鑑定能力を上昇させることが出来るかな?」

「どうかな?俺の場合は最初から今でも【鑑定】としか読めません。アルファベッドの能力値は付いていないんですよ」

「じゃあ、私に食べさせて」

「いいですよ、はいどうぞ」

「ありがとう。頂きます」


「ん、本当に美味しい!あら【鑑定】がSSSになったわ。おやこれは……」

「どうかしましたか?」

「ふふふ、ブランデーにこの柿のジュースを混ぜて飲むと凄く美味しくなるらしいわ」

「ブランデーなら有るので試してみましょう」


隼人は柿の皮をむいてジューサーに入れて回した。コップ一杯分のブランデーに対して柿ジュースを4分の1個分のジュースを混ぜて氷を入れてかき混ぜると不思議なことに透き通ったピンク色の飲み物が出来上がった。


一口飲むと人間の奥底にある欲望を満たしたいという感情が溢れ出して来た。まるで神の飲み物のような味わいだった。

「命名【ピロテース】なんてどうかしら?」

「良いと思うけどなんて意味?」

「うふふ、愛欲の女神の名前よ」

そう言って忍は隼人に抱きついて隼人の唇を奪った。その瞬間隼人の肉体に変化が起きた。下半身が忍を求めて屹立したのだ。

と同時に隼人の【鑑定】が【鑑定 神級】になったことを知った。そして【ピロテース】の正体とその効能を知ることになった。


(忍が欲しい!忍と一体になりたい!)

指が触れただけで身体中に電流が走る。忍の息が隼人の顔にかかる度に隼人のものが猛々しくなる。

忍が隼人のズボンを下ろす。強制的に閉じ込められていたそれが自由を得てより大きく屹立した。

「素敵よ隼人」

忍が自分の着ている服を脱いでいく。

隼人も手早く脱ぎ捨てていった。

二人はソファに倒れこんで一体になった。


何度目か判らないほどの快感を得た後、忍が幸せそうに呟いた。

「紅葉、ごめんね。お姉ちゃんが先に隼人を奪っちゃった」


【ピロテース】の効力が切れた時に忍が隼人に謝った。


「隼人ごめんね。【ピロテース】は強力な媚薬だったのよ。私どうしても隼人が欲しくて仕方なかったの。紅葉があなたを愛しているのは判っていたけれど我慢出来なかった。気持ちを抑えきれなかったの」


「知ってた。俺も鑑定が神級になっていたからな。でも【ピロテースはお互いに思いあっている者同士でしか効果が無いことも知っていた。だから敢えて忍とこうなれたことを嬉しく思っているよ」

「嬉しいわ。愛しているわ」

「「俺もだよ、忍。それならば君のご両親と紅葉ちゃんにも報告に行こう」

「うん。でも父はもう既に亡くなっていて、実家には母しかいないのよ」

「そうだったのか……じゃあお母さんの今後のことも考えないといけないね」

「ありがとう。でも母はまだ45歳だからこれから一花も二花も咲かせられると思うのよね。娘の私から見ても凄く綺麗だからびっくりするわよ」



それから2人は風呂に入ってイチャイチャしてから普段着の緩めの服を着てダンジョンから出た。


隼人の肉体にも変化が生じていた。筋肉ムキムキになって持っていた礼服が入らなくなって新調しなければいけなくなっている。紳士服店に寄って吊るしのスーツを買った。合うサイズが有って良かった。ついでにサイズを測って少し大きめの礼服を注文しておいた。


お土産に東京の名店のお菓子を買って新幹線に乗る。


忍は紅葉に電話して、これから実家に帰ると話しておいた。大事な話が有るから紅葉もこっちに帰ってこないで実家に留まっているように伝えた。









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