第32話

「あれ、何なの?嫌がらせ?」


「はい?」


「だから、俺に対する嫌がらせかっつってんの。」











あのディズニーランドから一週間。

何故か目の前に濂ちゃんがいる。

夕方、玄関からやってきた濂ちゃんは、母さんの許可まできちんととって、私の部屋に現れた。私の許可はいらないらしい。

最悪だ。逢いたいときには居ないくせに。


「私、なんかした?あぁ。彼女、なんか言ってんだ?」


「………」


図星ですか。


「言ってあげなよ。私なんかもう関係ないし、興味もないからって。」


「あ?なんだよそれ。」


覚えてないんだ?あんたの台詞だよ。


「お兄ちゃんに聞けば良いじゃん。連絡とってんでしょ?あの日、私を元気にするために連れてってくれて、要するに、私はあんまり機嫌が良くなかったんです。」


「なんで?」


なんで?興味ないでしょ?


「だから、あんな態度をとりました。彼女が怖がってたとか、心配してたとかだったら謝ります。ごめんなさい。」


ベッドの上に正座して、頭を下げた。


「わざわざそれのために?」


来ないで欲しい。

今まで無視してきたくせに、なんでこんなときは来るのよ。彼女の為?


「お前さ、不細工になったよな。」


誰のせいよ。


「知らなかった?昔から不細工だよ。もう用無いんだったら帰ってくれる?」


「さっきの………関係ないしって……」


「悪いけど明日、朝早いんだ。」


「どっか行くのか?」


興味ないでしょ?


「ちゃらちゃらした女子大生にも色々あるんです。」


「…………へぇ。」


早く行ってくれないとおかしくなる。


胸の鼓動がどんどん早くなる。


「もしかして………お兄ちゃんになんか言われた?」


成程ね。それで。絶対服従は今もなんだ。

余計なことして……。


「それはお疲れ様でした。私は元気いっぱいなので大丈夫です。来たくもない女の所にわざわざすみませんね。せっかくの時間、使わせちゃって。」


「何、それ。」


「はいはい。帰って彼女に愛の囁きでも送んなさいよね。もう、来たくないのに来なくて良いから。見たくない顔見に来ていただいてありがとうございました。」


あぁ、どんどんおかしくなる。


「お兄ちゃんには私から言っとくよ。もう変なことさせないでって。」


「ほんと不細工。せっかく来てやったのに。」



もう駄目だ。

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