第11話 未知との邂逅2
頭が痛い、、、
どこか打ったのだろうか。
何もした記憶はないし、そんなヘマを私がするとは思えない。
となると私の意識の外からの攻撃ということになる。
、、、攻撃?
惑星管理システムの私が、痛み?
人の創り出した、機械に過ぎない私が、痛み?
「ここは、、、、」
そこには、見慣れた
私に接続された数多くの中のデバイスの中でも、いつから、なんの意図でつけられたのか不明な監視カメラの映像。
声を出して楽しそうに噴水の周りを駆けていく子どもたち。
店先で寝転んでいる猫。
椅子に腰掛けて本を読んでいる老婆。
何を買おうか迷っている、青年とそれを遠くから見ている恋人と思しき人。
カメラか伝えられ、眼下に広がるその景色。
温かさに満ち、誰もが同じような表情をしている。
そのどれもが、輝いて見える。
あの時にはそんなこと思わなかったのに。
「あのとき、、、」
これは、過去の
ならば、私は今、何をしているのだ?
そう思った瞬間、視界が徐々に暗闇に覆われていく。
あの
いかないでと手を伸ばした、
だが、その光景はどんなに手を伸ばしてもそのたびに遥か遠くへ行ってしまって、
そして消え去ってしまった。
あとには、暗闇に一人取り残された私が残るだけだった。
ここは、どこ、、、
「んん、、、」
肌を伝う上着の感触が伝わってくる。目を開けようとしたが、余りの眩しさにすぐに目を細める。
背中に感じる感触が直に背骨を伝って脳に届く。どうやら寝かされているようだ。
<重力検知システム、正常。視覚機構、聴覚器官及び各種システム正常に起動中...>
「あ!起きた!?」
私の制御システムの起動信号をキャッチしたのか、気づけば私の身体のすぐそばにアルファインが座っていた。よく見ればその後ろにも、どこかで見たことがあるような全体的に黒い服装の青年が壁に寄りかかっていた。
「おはよう、アルファイン。」
「おはよ〜。大丈夫だった?急に倒れたけど。」
そう言うと彼女は私のそばに顔を近づけて、健康状態の読み取りを行う。
彼女の左目と、私の右目の中が光る。視界に診断中と書かれたアイコンが点滅し、その下にある小さなバーが
「心配したんだよ〜クロちゃんと二人でずぅ〜と待ってたんだからね!」
そう彼女は心配していた素振りを見せながら喋る。クロちゃんとはさっきから壁に背を預けている人のことだろうか。
「だからおれはクロちゃんじゃない!さっきからなぜ人の話を聞かない!」
推定クロと呼ばれる人物が反論する。今まで収集してきた人間のデータから彼の怒り具合を推測するに、私が起きる前に何度も同じようなやり取りをしていたことがわかる。
「えへへ〜クロちゃんってば照れちゃって〜」
にへへ、と溶け落ちそうなほどに柔らかく頬を歪ませながら彼を揶揄う。
「なっ、、、照れてない!」
一瞬驚いたかのようにを表情を強張らせた後、再びアルファインの思考へ強く訂正をしようとする。
「はいはい。」
それに対してまるで聞こえていないと言わんばかりにニヤニヤとしているアルファイン。まるで出来の悪い子供と親のやり取りを見ているようだ。
二人の漫才が一段落したところで私からの質問をする。
「アルファイン。その人は?」
彼女は一瞬なんのことを言っているのかわからないという顔を浮かべた後、何かを言おうとした瞬間―――
「なっ、、、、お前が助けたんだろうが!」
クロと呼ばれる人物(?)の方は
「、、、?」
何を言っているのだろう。私には人間で言う心当たりというものがない。
私が今起動する前に何があったのか、もう一度ログをロードする。
「はーいクロちゃん。そんな怖い顔しないの〜。」
「お前は黙ってろ!!!!まったく、、、」
「またそんなこといって〜。ほんとは照れてるくせに〜」
私が前回までの思考の欠片や膨大なデータを処理している間に彼女らはまた小競り合いを始めている。記憶の再ロードにはどうやらログの再生とは違う感覚が必要であるようだ。私が急に現れた対象にどう対処すべきか苦労している間にすぐに関係を築けるのは、少し思うところがあるが。
「アルファイン、つまらない話はそのへんで。」
「あ、はい。すみませんでした。」
「、、、、」
さっきまで騒がしくしていたアルファインが私の一言で急に丁寧に謝罪したのを見てクロが若干引き気味のような表情をする。
「ったく。これでやっとまともに話ができる。」
それはそれとしてようやくといった表情で彼は口を開く。
「で、貴方は誰?」
「その前に一つ。まずは感謝を。おれのことを助けてくれたこと。忘れないぜ。」
「だれ?」
これが目的のある旅路である以上、感謝の時間など無駄だ。特に緊急性が高い今の状況では。それに今目の前にいるこれが友好的な存在なのか足し豆なければならない。質問に答えないのでもう一度聞く。
「うっ、、、わかった。」
一瞬言葉に詰まったかのような表情をした後、観念したとばかりに答え始める。
「おれは闇の精霊。この地に息づくあまねく生命を観測し、均衡を保つのが役目だ。」
精霊、そう彼は名乗った。すぐに私のタワーに保存されているデータを参照する。
私達グランドベースには世界の全ての情報が入っている。古今東西ありあらゆる書籍、文献、論文、資料。その中からいくつかヒットしたものを掘り下げていく。
その結果精霊についての情報は得られたが結局存在するものではないとわかった。
ではなぜ彼は眼の前にいるのだろうか。
「精霊?」
彼に言ったことを聞き返すように尋ねる。
「そうだ。その様子だとおれが何言ってるかさっぱりか?なら話しとこう。精霊ってのはその土地に宿る神―――色々呼び方はあるが、土地神としておこう。」
彼は私の要望に応えてくれるようだ。私は少し頷きながら記録システムを起動してそのまま話の続きを促す。
「その土地神が段階を経てより高次の存在―――神化することで精霊になる。神化には色々条件があって―――まあそれは置いとこう。ざっくりいうとおれはこの辺一帯の闇を司る存在だ。といっても、殆どがエネルギーが補充できなくなって死滅しちまったから、同じ闇系統なら
そう言って彼は一度話を括った。私は唇に手を当て、そのまま少し考え込んだようなポーズをする。そのまま彼は私の様子を伺うように顔を覗き込んでくる。
思考加速領域で彼の説明で得た新たな情報を整理する。
まず、彼の存在について。
「土地神」というものが「神化」を果たした姿が「精霊」という順序らしい。
口ぶりから推察するにおそらく精霊の中でも強弱があるのだろう。それに、彼は「闇の精霊」と発言していた。とするのならば、おそらくは闇以外にもいくつかの精霊がいるものだろう。
その点の疑問点はまた後で聞くこととしよう。
それに、ひとまずは彼が敵対的な存在ではない、或いは対処可能な脅威であることがわかった。
今現在判明している彼の特性は、1に物体の透過性。
これは初接触時にアルファインのいたシャワー室の壁を完全にすり抜けて建物の外へと移動していたことからほぼ確定。
2に、分身。
これはアルファインが最初に見たものが分身であったという可能性である。
彼がこのSAにいた理由は謎だが、エネルギーの供給のために車両の動力機構は起動したままにしていた。
いつから車両に捉えられていたのかは不明だが、あそこで見たおそらく分身であるものは車両の下にあった本体らしきものよりも小さかった。
他にも、私が見た時―――魔素の流れを検知しようとした時にいくつか他にも反応があった。
判断材料としては弱いが、可能性はある。
次は対処方法だ。
まず、現状判明している彼に影響を及ばすものは
私の運用している生体デバイス内部の計測機器では、眼の前にいる彼は純粋な魔素の塊であることがわかっている。
つまり彼は高密度の魔素そのものであるという特性上、魔素を利用した機構を用いた道具があれば彼自身を捕獲またはエネルギーへと変換することができる。
ここから考えると、私やアルファインの持っている魔素を利用した
対象の特性については先程推測した限りではない可能性もあるが、こちらは数の利を取っている。こちらの保持する
既に行動パターンの学習は進んでいる。いかなる手段であろうと、先の出来事で対象が消耗している現状ならば勝てる。
ゆえに、対処は可能。
しかし―――
「ねえねえ、クロちゃんはどこからきたの?」
「あぁ?大体千年はここで寝てたな。どういうわけかこの部屋は俺達みたいなエネルギーで出来た存在に干渉するらしくてな。入ったやつが出てこれねぇんだよ。」
「えぇ〜!?じゃあクロちゃんはとぉ〜っても長生きなんだね!」
「誰がジジイだ!そもそも俺達精霊には時間の概念なんてありゃしねぇよ!」
眼の前で大いに
、、、
彼をこちら側に取り込めれば、監視と同時に彼のような対象についての特性の研究ができる。
彼としてはこちら側に対抗する手段があるのかは不明だが、私達に味方している限りでは彼に対して有用な機構の使用はないと言える。
双方がここで和解をすることで、私は彼を研究することで新たな
彼にとっては身の安全が保証される。
監視役には、、、アルファインを当てればいい。
長期的に見ればそちらのほうが利益にはなる。
「おい。そろそろ答えを聞いていいか!?じゃねぇとこいつが―――」
「ねえねえ、クロちゃんはなんで―――」
「うるせぇ!」
私が
どうやら彼とは問題なく仲良く慣れたようだ。
「なんとなく。では一つ質問をしたい。」
「なんだ?」
彼はアルファインの首根っこを掴み自分の体から引き剥がす。
先程まで目を輝かせていたアルファインがクロに引き剥がされた途端、残念そうな顔をした。
「どうしてさっきからクロちゃんと呼ばれているの?」
「なっ、、、」
おまえもか。という言葉が脳に直接聞こえてきた。しかしシステムは反応していない。何が起きたのだ?
「それはね〜真っ黒だからクロちゃんなんだよ!」
私が困惑していると、彼女―――アルファインが説明を入れてきた。
「だからおれはクロちゃんではないとあれほど、、、!」
「ええ〜いいじゃん可愛くて〜」
少しでも角を立てた瞬間、アルファインがそれをヤスリのように一瞬で丸くしていく。
「なっ、、、可愛くなどない!俺は闇の精霊だぞ!」
先程までの突き放すような返しとは明らかに異なり、まさにしどろもどろと言った風に返答を試みている。
私はそれを無視して話を続ける。
「理由はわかった。私達は休息のためにここに立ち寄って、その時運悪く貴方が私達の作った機構に影響を受けた。すまなかった。」
「謝罪なんぞ構わん。ただ、そうか。あれがお前らの作った機構とかか。少し見せてくれないか?俄然興味が湧いた。」
「 ? 構わない。もし支障がなければ、貴方の存在についても知りたい。」
「その程度ならいくらでもしてくれて構わない。ここであったのもなにかの縁だ。おれはあんた達についていくことにしよう。」
「え!いいの!やった〜クロちゃんが一緒に来てくれる〜!!!」
私が最後に言い切ると、彼女はそう言って顔をほころばせた。
「だ か ら ! おれはクロちゃんでもクモでもねぇよ!!」
―――――あとがき―――――
まずは、謝罪を。
なんやかんやでACにハマって一ヶ月近く投稿してなかったこと、すいませんでした。(正直何ヶ月サボってたのかは怖くて思い出したくない。(現実逃避))
続編を待ち望んでいただいた方にはほんとに申し訳ないです。
N2がいなかったらあそこで完全にダメ人間になっていたなと思いました。
ほんとに彼には感謝しかありません。
それと同時にきっかけは紫水ミライ氏の小説書こ〜みたいな投稿だったので、彼?彼女?にも感謝しています。(未だに男性なのか女性なのかがわかりませんが。)
まあそんなにあとがきを長々と書く暇があったらせかいのそうぞう続けろよと思うかもなのでこの辺で終わります。
あと正直、最初の回想のシーンで「なんてことのないいつもの日常、その一つ一つが幸福感で満ちていた。」とか「孤独感が私を襲う」とかより精細に詳しく伝えるためにそういう感情をダイレクトに表現する方法を使おうか迷ったのですけど、なんか、そんな言葉わざわざ使わなくてもそれくらい表現したいなぁと思って入れないことにしました。伝わってなかったらいまの話で理解してくれると幸いです。
ちなみに私はようつべのほうで
「こんなところで歌なんか歌ってるやつが小説なんかかけるかよw」
「文学はもっと崇高なものなんよお前なんかがそんなことしないでくださいお願いします。」
とか偉そうにほざいた人のことは忘れてません。
結局あのあと返信もつけたのになんの返事もなく、テンプレの「顔真っ赤で草」とかもなかったのでほんとにただの腑抜けなんだなと思ってます。
ならお前は文字すら使うな。あと自分が叩かれる覚悟がないならそもそもそんな発言をするな。
まあ、
「通報される前にコメ消しするのが大人の判断」
とか言ってる時点でただの無責任な愚者なことはわかりきっていましたが。
僕本人への誹謗中傷ととっても良かったのですが、返信がないので存在として飽ききました。
それなのに覚えてるというのはおかしな話ですけどね。
さっき終わるとか言ったのに結局長々と文字を並べてしまいました。
あまり言いたくないことも言ってしまいましたし、僕の個人的な感情でこの作品を穢してしまったような気もします。
やはりまだ子供ですね。
「この世に大人はいない。いるのはただの年を取っただけの子供だ。」
僕も、まだ子供のようです。
改めて。
この作品を読んでいただいてありがとうございます。
僕は文章力はあまりない方なので、僕の見えた世界が皆さんに全く同じイメージで伝わっているかは、わかりません。
きっとわからないところも、僕の思っている状況との乖離も多々あることでしょう。
それでも、僕は僕の見えた世界を伝えたい。
キミに届くまで。
ちなみに彼女たちの服装のフード部分は猫耳です。
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