第6話 隠密行動2

「まずは通気口までの移動。」

今いるのはタワーの隔壁の上にいる。そこそこな高所で、高さは30mほど。

 電柱の位置が15mと、普通より少し高い程度だったがそこはこの体のスペック運動能力の高さが幸いした。

 素早く動き出す。さっきも言ったが、ここは高所。つまりということである。まあ、眼に見えてヤバそうなさっきの5体の巨人たちには見えない陰になっている部分から来ているが、警戒するに越したことはない。

 それに、まだ同種の存在がほかにもいる可能性だってある。

この広大な都市すべてをカバーするのにはそれなりの数が要ると考えたほうがいいだろう。

 見つかったらそれはそれで仕方ない気がするが、結局先に進まないといけないことに変わりはないから、ここにとどまっているほうがリスクが高い。

 壁の上を走ってその中にあるタワーの外壁に向かって飛び出す。

「ふっ!」

そのまま上へ向かって壁を一度蹴る。すぐに先が開けて目的の場所にたどり着く。

 通気口は上部にあるが、その位置には、人一人分ほどの幅のメンテナンス用の段差がある。

 この体の能力で届くのはギリギリだと試算していたが、どうやら想定以上の出力が出たようだ。

 それでも地上からは到底たどり着けないような高さなのだが。

肌を突き刺す冷たい風がすぐそばを通りぬける。

 それに、あの現象雷を纏った刀を作ったのあとからボディの調子がいい。これもあとで要検証。

 何はともあれ、通気口まで来れた。金網状のダクトの枠を掴んで、引っ張る。

「うわぁ!?」

すぐに勢いよく茶色いかけらを散らして、ダクトが外れる。

 体勢を崩して、まずい、落ちる!?―――ところだった。

背中はちゃんと地面についている。

頭の上を鋭い風が過ぎる。耳が冷たい。変な寒気がして背筋かこわばる。危なかった、、、

「ここから落ちて死ぬのシャレにならないから、、、」

(でも、ここは人一人分の横幅、、確か1mあるかどうかだった気がする。なぜ背中―――はともかく頭がついているんんだろう?)

「まあいいや。まずは先にやることやらないと!」


 気をとりなおして、先に進む。

「ダクト外したから、ここからはもう下るだけだから、その先で武器を調達しないと!」

 このダクトを降りた先には、武器貯蔵区画にある一室へとつながっている。コアルームはその隣の冷却系の設備群を抜けた先にあったはずだ。

 両足を宙に向かって起こす。そのまま振り子の要領で勢いよく起き上がる。

もう一度、周りを確認する。

地上では相も変わらず、灰色の景色が広がるばかりだ。

問題のないことを確認したら、いよいよタワーへの侵入開始だ。


「よいしょっ、、と、うあぁ!?」

暗い灰色の景色が中心から外側に向かってものすごいスピードで流れる。

「うわあああ~~~~ああぁぁぁぁ~~!?」

 下に向かって滑り台のようにダクトの中を滑り落ちる。

何が起きたか。端的に言うと、立とうとしていたところに淵に置いていた足を滑らしてそのままダクトの中に半身を入れてしまい、そのまま滑り落ちたのである。

前に出したままの細い足で、必死に急角度に抗う。

 靴のこすれる音が、止まってくれという願いを絶望に落とす。ダメだ、止まらない。

ほぼ垂直に近いダクトの中を、かなりの速さで滑り落ちていく。

「―――っ!?」

目の前が急に白く染まる。

『ボスッ!』

「わぁ!?」

お尻の下になにかがつぶれて、勢いよく空気が押し出される音がした。

 下を見ると、どうやら段ボールがクッションの役割を果たしたようだ。

「あ、危なかったあぁぁぁ、、、、」

 部屋の中はまだ一部の電気が通っているようだ。薄暗い中、非常灯の明かりがそこにある鈍い灰色の鉄塊たちをライトアップしている。

 回りには背の高い棚や、武器が立てかけられるスタンドがとともにそれぞれの武器や防具が整然と並んでいる。

 自分の注意力の低さに反省しつつも、並んでいる武器や装備群の中から楽し気に自分の体格に見合うものを選んでみる。

 右を見ても左を見ても、物々しい形をした大小さまざまな物々しい見た目の武器が整列している。

 が、ここにあるものの大半が、大型のエネルギー兵器、、、実弾銃などのこの状況で使用可能なものではなく、この体ではまだ反動や重さに耐えられない代物ばかりだ。

 そもそもここまで年月が経つと、ちゃんと銃自身の制御デバイスが起動するかどうか怪しい。

 先へ先へと進んでいくうちに、目に留まったものを手に取っていく。


 「とりあえず、これくらいにしとこうかな。」

武器庫区画を抜けた先のコアルームへ続く通路を歩きながら、そう漏らす。

 持ってきたのは短めなコンバットナイフ二本と、ハンドガン一つにマガジン三つ。

あと閃光弾を一つだけ持ってきた。これはマガジンと一緒にバックに入れておく。

 それぞれ軍用規格のちゃんとしたものだ。

小柄な私にあった刃渡りのものを選んでみた。主にナイフで近接戦をしながら、牽制用にハンドガンと、もしもの時に閃光弾で一撃離脱をする予定だ。

 残念ながらエネルギー系兵装は、元となるエネルギーのカートリッジが空のままで並んでいるだけだった。わざわざ中に入れたまま保存する必要はない。

 ほかの銃は、室内戦で使うには単純に取り回しの悪い長さだったり、動きを阻害したりしたので、ハンドガンにした。

 それに、あまりに重すぎると、高速戦闘での撹乱を主体とした戦い方に支障が出る。

 身の丈に合ったものをちゃんと選んだ形だ。

『銃の安全装置を解除。各機能、異常なし。マガジンを挿入―――リロード完了』

 一応声に出して確認してみる。

 建物の中―――それも機密保持のための特殊な処理を施した最重要施設なだけあってだけあって、ここからは何があるかわからない。

「よし、先に進もう。」

そう、目の前の通路の出口―――その場所だけ、明るい光の差し込む、一種の神殿のような場所―――コアルームの制御システムのあるデバイスを見ながら、気を引き締めるのだった―――。

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