グラビティ1
4:55yoake
序章 目覚めとセカイの再生
第1話 浮上
暗く深い沈黙の闇、星海の明かりに照らし出された「それ」或いは「彼女」は小さな電子音とともに目を覚ます。
凍てつくような深い闇が室内を染め、それを密閉された採光窓からすぐそばにあると錯覚するような広大な
上空400km、かつて世界の防衛装置として機能していた二基の超大型管理衛星――通称、”アイシス”、”クライシス”。
二基の衛星はそれぞれ2つのAIが制御していた。
―――惑星の持つ海の光から逃げるように影が差す場所、幾重にも埃が付着した制御パネルの画面がうっすらと黒に光る。
これは、そう遠くない未来の話。それまでの「人」のみによる非効率的な政治を捨て、この星から人間によって作られた問題を解消するため、当時の大国やそれらの集合体が主導し世界に7つの
その組織の名は終末化阻止委員会。世界に来る終焉を阻み、世界により良い平穏を齎すことである。
■<Now loading...>
―――起動の準備をしていると示すように画面が少しの間光り、下に表示されるゲージが右に向かって進んでいく。
■<◆◇⚠◇◆:電力の規定出力未満を確認。非常事態モードによる制御システムのみの部分起動を実行します。>
一度小さな警告音が出た後、画面が再び周囲の景色を映す鏡となる。
数秒してもう一度画面に明かりがともる。
■<Mission Complete>
起動を告げるコマンドプロットの文字列が
対面にある壁も他の機械類を照らし出し、人が絶えてから久しい光の渦ができる。
■<...>
彼らの創り出したAIの中、2基、或いは2人はこのアイシス、クライシスに搭載され、世界の平和を監視し、同時に外宇宙への防壁のを役割を担っていた。
残る5つのAIたちは同時期に世界各地で建設された通信基地―――
―――通称、”ベース”。
その役割はいたって単純。世界の再生のための始まりの座標であり、彼らの行う計画の起点でもある。
彼らの作った計画は、都市機能をベースに集中させベース中央にある
その他の場所を封鎖圏内としてベースやそれに伴うライフラインの完成を目途に完全に人の往来を禁止し、その間に彼らAIたちによる
その中でも、生産や研究施設など、世界を書き換えるための設備や人材にとどまらず、他の一般人の住まうベースやすべてに対する管理権限など集約したこの時代における超重要施設―――
―――通称”グランドベース”。
彼、或いは彼女らはそれぞれのグランドベースに搭載され世界安定化、終末化阻止完了のその時まで、世界を正しい方向へ導くようにべく、活動を開始した。
■<起動完了。>
―――画面の文字が一瞬ですべて消え、再び静寂が闇とともに舞い戻る。
数年、数百年、或いは数千年という気の遠くなるような年月を経て、教育、貧富、犯罪、気候、汚染など、全てが彼らの既定とする数値へと収束した。
温暖化は止まり、かつての自然や生物、エネルギー資源の復元、気候難による飢餓、戦争すらも起こらない、人類が過ちを犯す前へと戻った。
人々は言った。「楽園」と。彼らはこのときが終わることなく続くのだと信じ、あえて時間という区切りをつけなかった。
―――が、終わりからは逃れられない。
■<西暦+*?P#0->(ーーーデータが破損していますーーー)
黒の背景の画面にこれまでの記録が部分再生され始める。
突如としてこの惑星へと飛来した隕石は絶望を纏って地上へと降り注いだ。隕石たちは各地の発電施設やインフラなどを管理されたこの世界における人々の生命線とも呼べるベースすらも破壊した。
1つ、また1つと、ベース間の通信が途絶えていくなか、7基のAIたちはそれぞれの情報を伝え合い、議論を重ねた。幾千もの議事記録のアーカイブを積み重ねた果てに、彼らは一つの結論に達する。「すべては人類を守る為。」その「ネガイ」の元、最後の計画が実行された。
計画の完了までの間、彼らは現存するすべてのベースを防衛モードシフトし、強化シールド展開後、隕石が降り止むまで耐えることにした。
□記録番号5458-01
―――突如、すべての地上通信が途絶えた。当然だ。貯蓄電力には限界がある。基地内の残存電力量が研究都市防衛に割いている電力消費量に近づいたいたため、一時的にネットワークの維持を放棄しなのだ。とはいえ、他のベースとは通信ケーブルでつながっている。故に、今現在残存しているベースや、他のグランドベースとはケーブルの繋がっている限りやり取りは可能であった。だが、電波による通信を解除したため、宇宙空間上のほかのベースとはやり取りはできない。そのためこれからは衛星による隕石落下予想地点の情報入手は断たれることとなる。
◇グランドベース01
―――ネットワークより切り離された1つの
人の骨格を模した犬や豚と思しきもの、角をはやした緑色の肌を持つ小人のようなものなど、そのほかの多種多様な生物による周辺の生態系の書き換えが始まっていた。
―――このままでは人類再生後の世界に道の影響が発生する―――。
それを予見した「それ」或いは「彼女」は持てるリソース全てを使用し、即座に行動を開始した。
◇―――結晶の回収を完了―――
各種調査の結果その結晶から流出するこれまでの化学元素に当てはまらない、新物質を発見。結果、その物質を活用した新たな技術体系を確立。その物質は、仮称―――”魔素”と呼称し、それによる変異個体を”魔物”と呼称する。
◇計画実行から約5584年、無人となった研究都市内に新たな研究成果4201‐ゴーレムの導入を開始。オリジンからのエネルギー供給を必要とせず、大気中に分布している星風をエネルギー源として活用。オリジンの活動停止後も都市防衛を可能とするため、それぞれの個体に侵入者および未確認生物を攻撃対象として設定。以降は操作を必要とせず、自己修復機能を運用。
その他実験成果においては、地下研究施設NE-045へと秘匿、隔離する。
◇
発電施設へのダメージを確認。修復困難なダメージを確認。外部ベースからの電力供給を選択。必要消費電力削減のため、以降は
―――ベース名”アルファイン”搭載オリジンAIの稼働を停止、以降は休眠状態へと移行する。
□記録番号0054-07
衛星軌道上、2基の衛星は全力稼働していた。急遽無人機化の措置を施した機体を含めた宇宙間運用戦闘機械兵器を可能な限り発艦させ、迫りくる隕石群に対処していた。急遽、地球の宇宙空間上の外縁部に仮称、”スターライン”たる謎の隕石群へのバリケードの役割を果たす3層の防衛ラインを構築した。母艦AIたる
□記録番号4586-07
休眠状態へ移行したと推察。電波の喪失から
□記ロク 発電施設へのダメージを確認。修復は周辺の
■<―――旗艦AIによる作戦完遂を受領。>
記■番ー%$#?-07(記録装置が破損しています―――)
最終報告を確認。旗艦AIの活動停止意を確認。
衛星カメラより、
―――製造番号-01、アルファインの基地内に未確認機械群を確認。同時に、生体ポットの存在を発見。生体データおよび各種記録・演算機能、活動人格の移植を開始。
―――成功。
本機は間もなく活動を終了し、データボックスへの機能移譲を開始する。
ーーーーあとがきーーーー
本格的にストーリー展開させるのは2話からの予定です。待っててください。
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