卒業パーティーにて

【卒業祝い】

スタンフォード大学を卒業した子供達を迎え、大広間にて卒業パーティーが開かれていた。



ここはナイト家。

資産家の娘として生まれた前世のシルビアが、科学や格闘の施設を盛り込んで建てた大きな屋敷である。



クレルモン。

マクファーソン。

ハウエル。


三つの人生を生きてきたシルビアは、先の二つの人生では早くに家族を亡くしていた。


そして現在の三つめの人生。

ハウエルの家に生まれた待望の女の子は、その小さな手に指輪を握っていた。


それはマクファーソンを火葬する時にシャスタが握らせた結婚指輪だった。


信心深い両親は彼女を奇跡の子と喜び、指輪に刻まれた名前を付け、二人の息子と共に彼女を溺愛していた。


16歳で前世の記憶を取り戻したシルビアに、家族達は20歳になるまで一緒に暮らして欲しいと懇願し、20歳の夏に悲しい別れをする。



ダラスからロサンゼルスへと旅立ったシルビア。


ところが、彼女を溺愛していた兄二人が後を追ってロスに引っ越して来た。

それならばと、両親を呼び寄せてナイト家で一緒に暮らす事にしたのだ。



その両親は既に他界したが、二人の兄夫婦は健在している。


彼らの子供達も大学を卒業し、もう一人、ガネーシャの息子タナトスも同じく卒業した。



今日の主役は6人の子供達。


シャスタの手料理を楽しみながら、あちこちでお祝いをしている大家族。

そんな中、シヴァが猫なで声でセフィーナを呼ぶ。



「セフィ~ナ~、ちょ~っと来てもらおうかな~。」



「なぁに、お父さん。」



にこにこ顔の父のもとへ赴くセフィーナ。



「卒業祝いのプレゼントだ。アウイナイトのネックレスな。」



「わあ、お父さんとお母さん達が着けてるピアスと同じ石よね。きれ~い。ありがとう、お父さん。」



その石の意味を知らない彼女は、綺麗なネックレスに喜び母親達に見せに行った。



「父上!俺には!?」



「お前……ネックレスが欲しいのか……?」



眉をひそめてマティアスを見るシヴァ。



「じゃなくて!俺にもプレゼントあるんだろ!?父さんと母さんみたいな神器くれよ!」



「まだ必要ねぇだろ?25になったら授けてやるよ。」



「卒業祝いにくれたって良いだろ~?セフィーナにプレゼントしたんだし俺にもくれよ~。」



ところがシヴァは首を振る。



「卒業祝いはセフィーナだけだ。お前にはなんもねぇ。」



「あっ、ひいき!ひいきしてる!父さん、父上がひいきし」



慌ててマティアスの口を塞ぐシヴァ。



「チクんなよ!追い出されんだろーが!」



子供達が産まれた日。

初めての娘の可愛さにメロメロとなったシヴァは、既に息子がいたせいもあり、娘と息子への愛情に差をつけていた。



男女の双子の孫がいたシャスタは、マルクが同じ事をして事件が起きた事を話し、愛情に差をつけるなら独りで天界に帰れと怒りを爆発させた。


その迫力と神妃達の悲しそうな顔を見て、シヴァはひいきをしないと誓ったのだ。


と言っても、やはり娘の方が可愛いので密かにひいきしている。

だが、ばらされては堪らない。


その事を知っているマティアスがニッと笑って。



「だったら俺にも何かくれよ。」



「いや、だからねぇんだって。」



「やっぱチクる!」



「脅すなよ!仕方ねぇな……ほんとのこと教えてやる。セフィーナのネックレスには念を入れてあるんだよ。」



「念?何の?」



「恋愛を破壊する念だ。成就させて堪るかってんだ。まだまだ嫁になんか出さねぇからな……。」



年頃を迎えた愛娘。

手放したくなくて、念を入れたネックレスをプレゼントしたのだ。



「ひでぇ……。父上、それは酷いと思うぞ。母上と母さんに知られたら殺されんじゃねぇの?」



「内緒にしとけ。大学卒業したら男女交際解禁だろ?イチャつくの見たくねぇんだよ。」



この家に暮らすペア達は揃ってラブラブだった。


愛の女神に認められたペアだから当然なのだが、しかもここはロサンゼルス。

愛情表現はちょっと過激である。



「けどさ~、母上達……愛を司ってるだろ?一発でバレんじゃねぇの?」



「バレねぇだろ。お前、絶対バラすなよ。」



楽観的な父親に、絶対バレるとつぶやくマティアス。

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