【送り込まれる暗殺者】

こうした数々の武勇伝が、やがてカンサの耳に届く。


誉れ高いクリシュナの名が耳に届いた時、彼は悟った。

他でもないクリシュナこそが、デーヴァキの8番めの息子なのだと。


彼こそが自分の敵なのだと──。

真の敵はクリシュナに在り──。


討つべき敵が判明したカンサは、彼を殺すべく刺客を送り込む。



送り込まれたのはアスラのケーシン。

そのケーシンが馬に化け、クリシュナを襲った。


クリシュナは互角の戦いを繰り広げ、その戦いに決着をつけるべく、馬の咽喉に手を押し込んだ。



「ギア“3”、巨人族の腕!」



ってな具合に、どこかのゴム人間の技名をパクり、咽喉に突っ込んだ手を膨張させた。



「う、ぐあぁっ!」



ブシャアッ!


馬は破裂し、絶命する。



あ、クリシュナはチビ化してませんよ~。



こうしてケーシンが倒されると、次は狼悪魔が送られて来た。

乞食に化けた狼悪魔が、クリシュナを襲おうと待ち伏せる。



「何か食べ物を分けて下さい……。」



通りかかったクリシュナに、物乞いをする狼悪魔。



「どうぞこれを。」



ニコッと笑って食べ物を恵み、去って行くクリシュナ。



(隙だらけだな……。)



変身を解き、真の姿に戻った狼悪魔が攻撃を仕掛ける。

だが、クリシュナには隙など無い。

捕まった彼は、絞殺されて事切れた。



こうしてクリシュナ暗殺に失敗したカンサは、次なる計画を実行に移そうと、国からの使者を送り込んだ。

クリシュナの実の両親を投獄したカンサは、彼をおびき寄せて殺す計画を立てたのだ。



『シヴァを讃えて行う大犠牲祭に参列して欲しい』



宮廷の長アクルラに招待状を持たせ、クリシュナのもとへと使いに出す。



この大犠牲祭とは格闘技大会の事で、クリシュナを対戦相手に殺させるという計画だった。

ところがその計画は当の本人に筒抜けとなる。


なぜなら、この書状を届けたアクルラが、隠れたクリシュナ信奉者だったからである。


計画の内容を聞いたクリシュナとバララーマは思案する。



「どうするクリシュナ。マトゥラーに行くか?」



バララーマが尋ねた。



「行きますよ。そろそろ任務を遂行しませんとね。」



罠でも関係ない。

今がカンサを倒す時なのだ。



「勿論、兄さんも行きますよね?」



「当然だ。俺はお前の手足だからな。」



ニッと笑った兄と共に、クリシュナはマトゥラーへと出発した。



この化身の使命である、悪魔の子カンサ討伐の為に──。

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