落ちぶれ行くインドラ

【インドラやめてクリシュナに】

天の国スワルガを治める天空の王インドラ。


だが、ラーマーヤナでも見た通り、インドラジットに敗れて捕虜にされるなど、彼の力は弱まりつつあった。


だからクリシュナは、養父ナンダと他の牛飼い達に、インドラを崇拝する無益さを説いていた。



「インドラは劣った神なんですよ。もうアスラに敗れるのも時間の問題です。彼への供犠は無駄に終わるでしょうね。」



「じゃあ誰を崇拝すれば?」



「昔は自然神を崇拝していたでしょう?」



クリシュナに言われて思い出した。



自分達の牛に草を食べさせ、その牛と自分達を保護してくれる『山の霊ゴーヴァルダナ』を。



「そうだ!我々の崇拝すべき神はゴーヴァルダナ!」



原点に戻った牛飼い達は、山を讃えて盛大な儀式を執り行った。

そしてゴーヴァルダナの霊として、クリシュナ自身が崇拝される事となる。


こうして、インドラへの崇拝はなくなり、クリシュナへの信仰が強まって行った。


当然、天空の王インドラは激怒する。

彼は怒りのあまり、クリシュナの正体を忘れていた。

忘れたままクリシュナを攻撃する。



「なんじゃあのわっぱは!儂を差し置いて崇拝されおって!」



ムキーッとお怒りのインドラさん。

元ヨーニマークの千個の目がギラギラしています。



「ぬぅ~……。クリシュナを崇拝する牛飼い共がぁ……。」



グイッとソーマ酒を飲み干して、攻撃を開始した。



「村ごと壊滅させてやろうぞ!」



クリシュナの住む村に、豪雨を伴う恐ろしい嵐をお見舞いする。



「なんて嵐だ!みんな!補強はしっかりやれよ!」



村人総出で家屋を補強する。

家や牛小屋を補強して、嵐が過ぎるのを待った。


だが嵐はおさまらない。

大雨により、水かさはぐんぐん増して行く。



「こ、このままじゃ村が流される!ど、どうすれば!」



この嵐の様子を見たクリシュナは、天を見上げてため息をついていた。



「インドラってば、何を考えてるんですかね……。あ、ひょっとして嫉妬?クスッ、お馬鹿さん……。」



インドラとヴィシュヌは盟友。

固く約束を結んだ友である。



「まあ、嫉妬にしてもやりすぎですね。」



後でとっちめてやろうと、黒い笑みを浮かべた。

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