青年期

女たらしの片鱗

【お腹すいた~】

「結構遠出したなぁ。」



「はは、たまには良いじゃないか。」



「そうですね。こうして見聞を広げる事は良い事です。」



クリシュナと仲間達が、戯れながら散策していた。



「けどさぁ、こんなに遠出するなら弁当持ってくりゃ良かったよなぁ。」



「だな。俺、腹減ってきた。」



「木の実でも探しますか?」



クスッと笑ってクリシュナが言う。



「木の実じゃ腹の足しになんねぇだろ~?って、食いもんの匂いがする!」



「え?食べ物の匂い?」



クンクンと匂いを嗅ぎ取ったクリシュナが、「ああ」と小さく言った。



「だ~、余計に腹減ってきた~。どっから匂うんだ、これ。」



「近くでバラモン僧が供犠の準備をしてるみたいですよ。」



「さすがクリシュナ。匂いだけで分かるのか。う~ん、神の子は違うねぇ~。」



クリシュナを肘でうりうりする仲間A。

されるクリシュナはふふっと笑っている。



ぐぅ~……



仲間AとBの腹が鳴った。



「あ~、駄目だ~、俺……飢え死にする~」



プッと吹き出すクリシュナ。



「あははは、そんな、死にませんよ、一回くらい食べなくても、あははは、」



「笑うなよ!お前は霞で腹いっぱいになるかも知れねぇけどよ!俺らは普通の人間なんだからな!」



ぷんぷん怒る仲間B。



「うわー。私だって人間ですよ?霞なんか食べて満腹になる訳ないじゃないですか。」



「けど腹減ってねぇんだろ~?いいね~、神様は。」



「何ですかその嫌みは。私だってお腹すいてるんですからね。」



ムッとしたクリシュナを見て、仲間Aが仲裁に入る。



「落ち着けって。腹減ってるから気が立ってんだろ?喧嘩してないで食料調達しようぜ。」



言われてハッとしたクリシュナが項垂れる。



「ああ、私とした事が……。空腹ごときで醜い争いを……。」



「反省は後にして行くぞ、食料調達に!」



仲間Aが笑って腕を引っ張った。

その気遣いが何とも嬉しい。



「食料なら大丈夫ですよ。バラモン僧に私の名を言えば、たぶん貰えると思いますから。」



ああそうかと納得する仲間AとB。

バラモン僧なら神の子に喜んで食事を出すはずだ。


3人は彼らが供犠の準備をしている場へ向かった。

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