第33話
強引に家に戻ったユリウスは、大きな事件などなかったかのようにいつも通り接してくる。
そんなユリウスを見て冷静さを取り戻すと、昼の出来事に対して、徐々に怒りがわいてきた。
「私をおとりに使ったのか?」
夜になり寝支度が済んだ後、灯りを消そうとしたユリウスに対して、そう詰め寄った。
数人の護衛ならともかく、上司までその場に居合わせるのはおかしい。
葬礼という理由をつけてオデットを外に出し、その身を狙う何者かを炙り出す。それがマクシミリアンとユリウスの目的だったのではないだろうか。
ユリウスは灯りを消すのをやめて、寝台に上がるとオデットと向かい合うように腰を下ろした。
「……不安が排除されれば良いと思っていたのは事実です。あなたが一日でもはやく、平穏な生活を送れるようにするためです」
「平穏な?」
どうなったら、オデットの生活は平穏になるのだろう。この国の民の誰もがオデットの名前を忘れたら、実現するかもしれない。
「私は貴方を故郷に連れて帰るつもりでいます。あの地なら、もっと自由に生きられるはず。私の両親も兄弟もあなたを歓迎するでしょう」
「お前には、たくさんの家族がいるのか」
「はい、貴方も賑やかで楽しく過ごせるはずです」
故郷を思い浮かべたのか、ユリウスは穏やかな笑みを浮かべて言った。しかしオデットにとっては、家族などもういない自分との違いを認識させられただけだった。
「誰が役にも立たぬ女を歓迎する?」
ハンナとだって、なかなかうまく関係を築けないオデットが、ユリウスの家族に受け入れられるとは思えない。
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