第22話
オデットは、ユリウスに強制的に着替えをさせられ、一階の客間まで連れて行かれた。
ぎりぎりまで抵抗し、引きずられるようにやってきたオデットだったが、部屋の前でキンと響く女の笑い声を聞き、自身の態度を改めた。
「もういい、自分で歩く」
着せられたドレスは地味で着心地もあまりよくない、髪もユリウスが梳いて高い位置でひとつにまとめただけ。宝石は何も身につけていない。
対してあの女は窓から遠目に見ただけでも、魔具なのかただの装飾品なのかわからない首飾りや耳飾りをつけて、派手に着飾っていた。
勝負を挑む相手ではないのに、なぜこんなにも意識してしまうのだろうか。
ジベールはともかく、サンドラと顔を合わせたのは数えるほど。だが、オデットはあの女魔術師が嫌いだった。
今ならわかる。当時からオデットを皇女として敬う気がなかったからだ。
立場が逆転した状態で会えば、彼女が見下してくるのは間違いないだろう。
「ねがえり大臣、それと魔術師長の情婦だった女か……よくもわたくしの前に姿を見せられたものだな」
ゆえに、オデットは最初から喧嘩を売った。
「オデット!」
ユリウスは慌てた様子で間に割り込んでくる。
ジベールは驚きの表情を浮かべ、サンドラは顔を引きつらせていた。
「オデット、説明していませんでしたが、そもそもこの家はジベール殿からお借りしているものです。本来なら、彼にはここを自由に出入りする権利がある。あまり失礼な発言はひかえるように。……ジベール殿、妻が申し訳ありません」
「よいのだ、ユリウス。私にとっても皇女殿下は、皇女殿下以外の何者でもない。いや、殿下とお呼びするわけにはもういきませんが……オデット様、本日は貴方にお聞きしたいことがあってまいったのです」
そう言って、ジベールはずっと年下のオデットに膝まで折ってみせる。
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