第16話
そうして、三つ目の選択肢、ナイトドレスとガウン、長い髪も束ねることなくそのままの姿で食堂に顔を出すと、ハンナは何度も目をパチクリとさせ、最後には盛大なため息をつかれてしまった。
「まあ、いいでしょう。奥様のお席はこちらです」
しぶしぶといった様子で、食事を出してくれる。
スープと固いパンの簡単な食事だったが、地味な見かけから想像したよりずっと味は美味しく、温かい食べ物はオデットの空腹を満たしてくれた。
「旦那様は午後お戻りになるそうです。お客人もご一緒ということなので、今度こそお支度をおねがいしますね。お手伝いいたしますか?」
もしかしたらハンナも仕方なく、オデットが頼みやすい状況を作ってくれているのかもしれない。
ここで一言、「頼む」と言えばいいのだろう。だが、オデットには素直になれない別の理由があった。
「……わたくしは誰にも会わない」
「まあ、そんなわがままを!」
わがままなものか。話が通じない苛立ちを抑え、オデットは立ち上がった。
「ごちそうさまでした。たいへん美味しかったです」
妥協できることと、できないことがあるのだ。
ただのわがままでないと、そう主張したくて、オデットは彼女が望んだ女性らしい言葉遣いで礼を言って、早足で部屋に逃げ込んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます