あらすじ

「パパなんていらない」そういう娘を持つは、を殺そうと考え、マッチングアプリを使って〝学生〟〝自由人〟〝公務員〟という男を集めた。

 財務官僚の葛原がビルから転落死する。懐にはシステム・ヤマツミの宝田社長の財布。屋上には刃物が落ちており、ビルの近くで宝田の遺体が発見される。状況から、金銭目的で宝田を殺害した犯人が飛び降り自殺を図ったと判断された。


 システム・ヤマツミの監査部に籍を置く剣法子は、警察の見解に違和感を覚えた。葬儀時は、社員の前に彼女が顔を見せるのは初めてという社長夫人、鈴菜の冷静な態度に感嘆すると同時にやはり違和感を覚える。彼女と宝田の間には、十三歳の誠治と十歳の瑞希という子供がいた。

 葬儀後、社長の愛人の本庄華が鈴菜に金銭を要求した。騒ぐ華の前に表れたのは葛原の事件を捜査する神宿署の九条刑事だった。

 法子は、社長室の整理で親子関係が0.001%と記されたDNA鑑定書を見つける。秘書は焼却ごみに分類したが、法子は抜き取って保管した。

 強盗殺人事件という警視庁の判断に疑問を持って捜査を続ける刑事がいた。九条だ。彼に連絡を取ろうとした法子は、部下の立花刑事に九条の死を教えられ、彼の捜査協力要請に応じる。

 ふるさと納税システム〝故郷応援団ふるふる〟の権利取得の経緯に疑問を持つ法子が古参の社員から聞き出したのは、十三年前、クニノミヤ物産社長の綾小路からで買い取った事実だった。綾小路は、宝田夫妻の仲人でもあった。法子は、〝故郷応援団ふるふる〟の権利取得と宝田殺害事件の間に関連があると推理する。

 立花は、宝田には本庄華、逆井亜里子、篠田美緒という愛人がいて、その内の二人には子供がいること、クニノミヤ物産内に宝田による買収話の噂があることを調べ出した。

 鈴奈の自宅を訪ねる法子。常に鈴奈は不在でネグレクトを疑う。そうした中、瑞希が法子になついた。

 葛原の妻、沙良を訪ねる。空き家だ、と教えてくれた高齢者と共にひき逃げに遭遇する。命を狙われたのか偶然な事故か?

 法子と立花が張り込んでいると、鈴奈が綾小路に送られて帰宅。彼女に買収問題を尋ねるが、彼女は何も知らないととぼけた。

 ある日、玲奈が路上で切り付けられる。彼女の証言で法子に容疑がかかり、星城署で聴取される。

 容疑者となって立花と会えない法子は、事件を解決すべくDNA鑑定書を持って篠田美緒、葛岡沙良、逆井亜里子を訪ねる。そんな法子を尾行する影がある。法子は星城署の刑事だと考えた。

 亜里子と話して分かったのは、宝田夫婦は仮面夫婦だったということと、亜里子の娘は宝田に認知されているということだった。

 亜里子の家を出ると、立花が尾行しているのに気づく。彼は警視庁の嶽宮の命令で、法子の捜査を止めに来たと告白する。


 宝田鈴奈のスマホに〝自由人〟からのメッセージが届く。彼に法子を尾行させていたのだ。法子が邪魔者だと確信した鈴奈は〝公務員〟に彼女の殺害を暗示する。

 彼との短い逢瀬を済ませて帰ると、子供たちが「ママ、パパを殺したの?」と詰問。誠治がシェフナイフを構えた。


 法子の元に瑞希から助けを求める電話がある。宝田家を訪ねると瀕死の鈴奈が横たわり、誠治がシェフナイフを握って座り込んでいた。

 誠治は逮捕され、法子は瑞希を預かる。彼女は母親が〝自由人〟や〝公務員〟らと連絡を取っていたスマホを持っていた。鈴奈に切りつけたのは〝学生〟を使った自作自演で、尾行をしてたのは〝自由人〟葛原や九条を殺害したのは〝公務員〟だろうと推測できた。そのスマホから、自分を襲う指示を撤回する旨のメッセージを〝公務員〟に送る。

 翌日、瑞希を連れて病院を訪ねる。鈴奈の命は尽きようとしていた。嶽宮が現れ、二人だけで話すために屋上に向かう。宝田、葛原、九条殺しは〝公務員〟である嶽宮の仕業だった。彼は法子を気絶させて鈴奈のスマホを奪い、屋上から落とそうとする。そこに立花が現れて法子を救う。


 鈴奈が死去し、遺産は瑞希が相続。マンション内の家財の処分は法子に託され、ある契約書を発見する。それは、宝田が誠治を妊娠した鈴奈と結婚する代わりに〝故郷応援団ふるふる〟を譲り受けることや、結婚後も鈴奈と綾小路の不倫を認めること、契約は当事者が亡くなるまで継続するという内容だった。その契約のために鈴奈は夫の殺害を計画し、宝田はクニノミヤ物産の経営権奪取を考えていたのだ。

 後日、瑞希から法子と立花にメッセージが届き、誠治が母親から性的虐待を受けていたことや、兄に母を殺させたのは瑞希で、彼女が綾小路を殺害する可能性があることに思い至るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

悪女と愛と淫らなゴム 明日乃たまご @tamago-asuno

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説