『アイドルユニットが百合営業疑惑を払拭するために楽屋の抜き打ち配信する話』
龍宝
「アイドル百合ットは天下無双」
「――というわけで楽屋に到着! どーもー、『R.o.S』のリオちゃんっす!」
レンズを覗き込む片目のアップが配信画面に映し出される。
『近いw』『なにも見えんww』『いつもの』『リオちゃんどこw』
視聴者の書き込んだコメントが流れてぴったし一秒後、
「えー、ウチらは今『アイドル戦国時代☆天下無双のB級アイドル決定戦!』ってゆーイベントの真っ最中なんっすけど」
マネージャーのカンペをガン見しつつ、カメラを左右に振る。
彼女たちの所属する五人組アイドルユニット『R.o.S』は、この〝ぶっちゃけあんまり有名じゃないユニットだけで集まって一番を決めよう〟っていう前向きなんだか後ろ向きなんだか微妙な企画に昨日から参加していたのだ。
三種目の総合点数を三日間で競い合うという日程の中、今日は『ダンス』のクオリティで先ほどまで有象無象のライバルユニットたちと争っていた。
まァ、それは置いといて。
「で! 今日の配信はっすねー、最近SNSでよく言われるやつ――」
一拍
「――『R.o.S』百合営業疑惑! 実は不仲説、にメスを入れていきたいっす!」
『マジかw』『そこ触れちゃう?ww』『言ってんの一部のアンチやろw』
「いやー、ウチらめっちゃ仲良しなんで、これ最初見た時まあまあショックだったっすねー。だから疑惑を払拭する意味でも、今日は油断してる楽屋の様子を抜き打ちチェックしていく、ってゆー企画っす」
さっそく突撃っす、と楽屋のドアを開け放ったリオ。
五人共用のそれにしてはやや手狭な感のある室内に、荷物やステージ衣装、確保されたケータリングの容器などが散乱している。
「うわっ、びっくりした。何してんのー、リオ?」
入ってすぐのところでペットボトルを傾けていたポニテの少女――
「マイ
「ケータリングのカレー……ちょ、それアタシのスプーン⁉」
「う、そういえばウチお腹いっぱいだったっす。さっき弁当2個あったんで」
「じゃあ何で食べたの⁉」
ユニットのお姉さんキャラであるマイが慌てている姿に、コメントでは『リオマイきたw』『もう答え出てる』『Q.E.Dww』と盛り上がる。
「いやー、実はかくかくしかじかっす」
「あー、例のやつか。……そんなんじゃないよね。アタシ、みんなのこと好きだし」
「うはっ、マイ姐に言われると顔が良すぎてめっちゃ照れるっす」
「にやけ面を視聴者さんに見てもらいなよ」
カメラの向きを巡って
「っとゆーか、他の3人は? 全員
やりとりの後、マイから逃げるように戻ってきたリオが室内を
「いるよ。――ある意味、
妹分を構って満足したのか、ちゃっかり座り直してスイーツの包装を破っていたマイが、奥のカーテンで区切られたスペースに目を向けた。
この会場の楽屋は半分ほどが座敷になっており、寝転がって仮眠をとったりもできる。
できる、けども……
「え、あのスペースに3人も詰めてるっすか?
ごくり、と喉を上下させたリオに、マイは肩を
ホラー映画の序盤で怖い目に遭うユーチューバーぐらい
シャッ、とひと息にスライドさせた先には、ユニット仲間の残り3人。
『ちょwリアル川の字ww』『これは天下無双www尊み秀y』『はい優勝、解散』
ひとつの布団にもぐり込んで寝息を立てる、
「え、えーと。……以上、『R.o.S』百合営業疑惑! やっぱり仲良し説、でした‼」
配信終了。
ちなみに、この動画がSNSで拡散されて『R.o.S』はファン投票で一躍トップに躍り出たが、審査員の「ダンス関係ないやん」の声で審議となった。
『アイドルユニットが百合営業疑惑を払拭するために楽屋の抜き打ち配信する話』 龍宝 @longbao
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