布団ダンスバトル

Rotten flower

第1話

高田龍一、ある界隈では僕を知らない人はいないと言われるほど有名人だ。

そう、布団ダンスバトル界隈では。

至ってシンプル、布団を使って多種多様、時には型破りなダンスが繰り広げられるこの界隈で、「天下無双」という肩書がつけられる程に僕の噂は広まった。

それを志したのはその日のことだった。親に連れられて、布団ダンスバトルを見に行った日のこと、冬だというのに熱気が会場を包んでいた。それくらい人が集まっていたのを思い出す。布団を使ったダンス、今の君たちと同じように僕は馬鹿馬鹿しくそれを見ていた。ただ、出会いは突然だった。

滑らかに動く布団はまるでドレスを着た人かのように、生を持ったかのように動いていた。

僕の網膜に焼き付くにはそれだけで十分だった。

帰ってからもずっと忘れられなかった、そして、

「お願いします」と勝手に道場入りしてしまっていた。

感覚を掴むとある程度の技はできた、応用技は基礎技の組み合わせであるという言葉の通り、応用技もことごとく成功させていった。

道場の人々は「これは全国を目指せるかもしれん」と言っていた。その年の全国大会はTOP16止まり。あまりの壁の高さに少しの期間、病んでしまったのを覚えている。

そして、それからも練習を続けていつの間にかほぼすべての技ができるようになったし、いつしか「リュウイチスペシャル」という技まで編み出してしまった。これもただの基礎技の足し算でしかなくて、でも、それらのポーズを移すのが難しいと言われた。

全国大会は「リュウイチスペシャル」を決めていつしか決勝まで上がっていた。対戦相手も使おうとしたものの僕とは違い転倒、布団に助けられていた。

準決勝から決勝まで、少し期間が空いた。その間、僕は決勝で決めようとしている技の最終調整をしていた。

「……だめだ……こんなクオリティじゃ……」

それが、「一体四回転」……先人でもできた人は一人しかいない。そんな技に挑戦していた。あの頃見た、あの技。自分はこれに憧れてこの世界に入ったのだ。

いつしか、布団もボロボロになっていた。縫い目のいっぱいついた布団も今となっては相棒だ。


決勝の舞台になった。結局、安定して出せるようにはならなかった。

対戦相手は一発目から「リュウイチスペシャル」を決めてくる、自分も負けじと同じものを決めて、試合はイーブン。二発目、「呪縛解放」を披露、かなり難度の高い技だ。でも、あれに勝てる手札はいくらでもある。

「そんな簡単に勝って、それでも布団ダンサーか?」

脳裏にどこからかそんな声がよぎった。違う、そんな安泰なルートを辿ってちゃ、いつかはオワコンだ。

僕は準備体勢を急遽変更した。

「……一……ニ……三……!!」

四度体が回った。布団と顔を合わせる。アイコンタクトをしたのち、軽やかに着地した。

会場内が割れた拍手に包まれた。

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