第13話:救出

俺は、心の底で助けてとお願いしている目を見たら、手を差し伸べたくなってしまうんだ。


でも今回、お金には限りがある。全員助けてたいと願っても、それはただの欲望となって腐っていく。

だから今回だけは……


諦めかけていた時、札を机に強く叩き置く音が聞こえた。

「そいつは俺が買ってやる」札を置いたのは青髪の青年だった。


俺は入口のすぐ側に立っているため、彼がいくつ出したのかわからない。だが、貴族たちの反応からして、8000万くらい……

「なんと!?1億6000万」司会者が驚く。


俺もポカーンとしていた。

1億6000万を一人の女性に出すなんて……


でも、俺はあの人をどこかで見たような……

次の瞬間!彼は、恐ろしい目つきで俺を睨んできた。

俺の思考を読んでいるかのように……


「さあ、次の品は赤茶色がかった髪色、そしてなによりこの容姿! おとなになったら、今よりもっと魅力的になるのでしょう。最低価格は600万からだ」


アンの魅力的な容姿につられ、貴族たちが値段をどんどん釣り上げていく。だから、6000万なんて余裕で超えた。この時のアンの瞳には希望が感じられた。まるで、夜暗やあんにポツリと輝く星のように!


どんどんと釣り上がっていく値段、どこまで上がっていくのか不安になる。

だけど、段々と値段の更新スピードが落ちていき、最終的に1億1000万で止まった。


そして、俺以外にこのあと上の金額をいくものは現れなかった。

「落札!! 」

会場で拍手が起こる。そしてアンは俺を見て、 パァっ と明るい笑顔を見せた。


だが、その喜びは束の間、ステージに巨大な門が轟音と共に現れた。そして門の奥から、猫背で紫色の人形ひとがた魔物が威圧的な存在感を放ちながら姿を現した。


貴族たちは震え上がり、オークションから悲鳴をあげて逃げていった。司会者は足がすくみ、立てなくなっていた。魔物は司会者の左胸めがけて指をさした。すると司会者の左胸には大穴が空き、司会者は倒れた。


舞台は司会者の血で赤く染まっていった。司会者が死ぬのを見ていたメープルは青ざめ、舞台裏のドアから逃げようとする、が、貴族が外側から鍵をかけたため出ることができなかった。


「え?、なんで出られないの??ねえ、いるんでしょ、開けてよ! 」

メープルがドアを何度も叩く。しかし貴族たちは、もうドアの前にはいなかった。


そんな時、青髪の青年が舞台裏にやってきた。

「無駄だよ、彼らは君を見捨てたんだ。さあ、僕と一緒に神のもとへ行こう!メープル」


彼の声は少し高く、喋るたび気に触るような声だった。

彼の言葉を聞いた瞬間、メープルの瞳はみるみる青く染まり、まるで操られているかのように門の中へと足を踏み入れた。


青髪の青年は門へ入る前、俺に手を振った。

そして、門は消滅した。


「アン! アンの横にいる天界から来た、人形ひとがたの魔物は魔神の可能性がある。だから注意して……」


「あれ……?」天と地が逆さまになっている、不思議な感覚。俺は地面へ叩きつけられ、ようやく理解した。

足首から先が蹴られてなくなっていることを……


俺は魔神に足を蹴り飛ばされたらしい。

耳に高い一定の高音がなった。もしかして、俺はもう死ぬのか?


魔神はアンの方へと歩き出す。だから、俺は足止めとして、魔神の足を掴んだ。

「……これで俺を無視できないだろ?」


魔神は俺の足が邪魔だったらしく、俺の右腕を何度も何度も踏みつけた。俺の視界が跳ねた血によって赤く染まってゆく。


俺の右腕はほぼ動かないような状態になっていた。

でも、俺は最後の力を振り絞って、アンに近づく魔神の左足を掴む。


途端に魔神は俺を睨みつけてきた。

だから俺はこう言ってやった。「やれるもんならやってみろ!!」と。

魔神は俺へと向き直す。


魔神に隙ができた今、

あとはあなたに任せます。リリシヤ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る